スポーツ

2024.04.17 13:15

大谷翔平選手、会見での「緊張度」が分かる3つのポイント

田中友梨
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備えよ常に

このように3月25日の会見では、大谷選手の緊張を示す3つのポイントが浮き彫りになった。

それでもあの場で、あの状況に身を置いた彼が十分なほど冷静さを保てていたことは言うまでもない。なぜなら、メモがあると冒頭で説明しながらも、それだけをずっと見て読み上げるのではなく、記者に顔を見せて話すよう努めていたからだ。

例え自分が本件に一切関与しておらず潔白であったとしても、あの立場で人前で言葉を発するとなれば平常心ではいられないだろう。しかし、堂々と顔をあげ、やつれた表情も見せず、不安そうな声音を出すこともなく、明快に口籠もらずに話せる、「今ここ」に集中する強靭なメンタルを持っていることが本当によくわかる会見だった。

通常よりも早口だったり話が散らかったりする部分も見受けられたが、彼の専門である野球のことを話しているわけではないのだから当然だ。また話したくても話せないことばかりの中で、注意しながら発言するのだから、少々の突っかかりは仕方あるまい。手元の原稿だけを見て、顔を上げない、「ただの読み上げ」会見を山のように見てきた筆者は、なんと堂々たる会見だったのだろう」と思った。

今回の会見から得ることのできる学びは、リップノイズや唇噛みしめ、フィラーは、その人の緊張度合いと比例すること。そして、それが出ることでさらに緊張感が高まるという負のスパイラルが生じることである。それを可能な限り少なくするためには、事前対処法とその準備をしておく必要がある。

嬉しくない会見やスピーチの際には特に。嬉しい会見には準備の時間がある。しかし、クライシスは突然やってくるのだから。

【事前にできる対策】

「登壇直前に口の中を濯ぎ清潔にしておく」 - 乾燥した時のベタつきを出づらくする

「少し水を飲む」 - 喉と口の中を潤す。冷たい水を飲むことで、緊張で熱くなっている体がクールダウンし、体も気持ちも少し落ち着く。

「水で手を冷やす」 - 緊張が緩和する。

「唇にリップクリームをつけておく」 - 唇の渇きによる喋りづらさを防ぐ

*唇を舐めたり、口の中を唾液で湿らせても、それはほんの一時的な潤しであり、かえって乾燥を誘発してしまい、乾燥のループを引き起こすため。

これらは、筆者がエグゼクティブ対象のメディアトレーニングや、プレゼンスマネジメントのアドバイスをする際に必ず伝えている基本的な事柄の一部だ。もちろん、これらだけでは足りない場合は多々ある。しかし、やっておけば安心するし、やらないよりも喋りやすくなる。何より、登壇前のルーティーンがあるのはとても大事なのだ。それで自らをゾーンに導き「大丈夫」と思えたら、心理的な安心感によって緊張感が軽減し、リップノイズなども確実に減少する。

大谷選手でさえ、緊張するとこのような現象が現れるのだから、我々は手筈を考えるのと同時に、「Be prepared(備えよ常に)」を念頭おくことが必要なのかもしれない。

文=日野江都子

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