従業員エンゲージメントで成果を出す企業とは

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従業員エンゲージメントが企業経営には重要だという認識が高まっているが、エンゲージメントに関する意識調査から、その取り組みが成果をあげている企業と、そうでない企業との違いが明らかになった。

NTT ExCパートナーが、従業員300人以上の企業に勤務している正社員を対象に行った調査では(2000サンプル)、エンゲージメント向上が重要だと考える人は全体で65.3パーセントにのぼった。とくに経営者層と人事領域の実務者は、重要と考える人は8割を超えている。

ところが、実際にエンゲージメント向上のための取り組みを実行し効果をあげていると答えた人は全体で26.7パーセントにすぎない。実行しているが成果が出ていないと答えた人はやや多く33.6パーセントだった。

そもそも従業員エンゲージメントとは、従業員が職場の理念に共感し、主体的に仕事に取り組む姿勢や意識のこと。つまり「ヤル気」だ。それは上からの強制で育つものではないため、エンゲージメント向上の取り組みは非常に難しい。

経営者層は、自分の会社に愛情を持ち、気持ちよく一生懸命に働いてくれることを従業員に願う。そのため、エンゲージメント向上の優先度が非常に高い。ところが人事の最優先課題は人材の獲得や人事制度の設定などとなっていて、エンゲージメントの優先度は低い。じつは、この経営者層と人事との認識のズレが、エンゲージメント向上の取り組みで成果をあげている企業とそうでない企業とでは大きかった。成果をあげている企業に成功の鍵を聞くと、トップ3が、役員や幹部がエンゲージメントの向上に前向きであること、エンゲージメントの状態を把握すること、人事部や人材開発部が従業員のエンゲージメント向上に前向きであることとなった。

これに対して成果をあげていない企業は、社員が声を出しやすい環境作り、役員や幹部のエンゲージメント向上への前向きな姿勢、エンゲージメントの状態をふまえた課題と目標の設定といった内容だが、人事部の姿勢は問われていない。また、今後の取り組みについては、成果を出している企業のトップ3は、入社前に社員と話す機会を提供すること、社内のメンター制度の充実、給与条件の改善とある。成果をあげていない企業は、給与の改善がトップで、残業時間を減らす、上司と社員の定期的なコミュニケーションの機会を設けるといった内容で、やや消極的に思える。入社前の社員との交流やメンター制度の充実となると、人事部を巻き込まなければ難しい。そこに決定的な要素があるようだ。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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