賃上げ企業が8割に 次の課題はアップ率の向上

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今年に入り、日経平均株価は一時4万円台に突入したものの、最近はまた円安が加速し物価高がより進むのではと懸念されている。それに伴い賃金が物価高の分をカバーする上昇をしてくれればいいのだが、実際のところはどうなのか。労働団体の連合が4月4日に発表した2024年春闘の第3回回答集計結果では、全体の賃上げ率は平均で5.24%と33年ぶりの高水準だとしたが、帝国データバンクが新年度の賃上げの実績および新入社員の初任給について企業にアンケートを実施。その結果が公開されている。

それによると、2024年4月の正社員給与の前年同月からの変化について問うたところ、賃上げする・した企業は77%となった。内訳は「3%増加」がもっとも多く22.0%となり、「5%増加」(15.0%)、「2%増加」(12.4%)と続いている。一方で、「据え置き」が16.6%あり、「減少」も0.6%と僅かながらあった。連合の目標である「賃上げ率5%以上」を実現した企業は26.5%に留まり、5%未満67.7%と3社に2社の割合になっている。

賃上げした企業の規模別に集計してみると、「大企業」は77.7%、「中小企業」も77.0%と8割近いものの、「小規模企業」は65.2%と11.8ポイントも下回っている。賃上げした企業のコメントとしては「従業員のモチベーションアップや人材確保のためにもさらなる賃上げは必要」「原料費などの高騰を完全に価格転嫁できていないため大幅な賃上げ実施は難しいが、従業員の士気向上のためわずかながら賃上げを行った」などと、従業員のモチベーションを上げるために努力していることが伺える。一方で、据え置きした企業では、「仕入れや水道光熱費などの固定費が上がっており賃上げどころではない」「売り上げが上がっていないなかでの賃上げは、中小企業にとってかなり厳しいものがある」など、厳しい状況でそれどころではないようだ。

2024年度入社における新卒社員の採用状況について問うたところ、「採用あり」は45.3%、「採用なし」は53.1%と採用ありを上回った。大企業と小規模企業では差が激しく、「募集したが応募がなかった」という企業もあり、人材確保も厳しい実態が浮き彫りになっている。

新卒社員の採用があった企業に新入社員の初任給額を問うたところ、「20~24万円」が57.4%でトップ。この額、筆者が30年以上前に新卒でもらった初任給とほぼ変わらない。物価は確実に上がっているのに、給与はほぼ横ばいのようだ。

人手不足で大企業は賃上げして労働力の確保・定着を目指しているが、中小企業、特に小規模企業は、コストアップぶんを価格へ転嫁したり、より一層のDXにより生産性の向上を目指すなど、賃上げの原資を確保する必要に迫られている。

出典:帝国データバンク「2024年度賃上げ実績と初任給の実態アンケート」より

文=飯島範久

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