海外

2024.05.07 14:15

ナポリの暗号通貨ジャーナリストも。イタリアの「非凡すぎる」スタートアップ3社

2.Decripto.org:先端詐欺との闘い。ナポリの暗号通貨ジャーナリストたち

Decripto.orgは、ブロックチェーン、ウェブ3、暗号通貨、NFTに関する詐欺やフェイクニュースを一掃することを目的とする、ジャーナリズムサイトだ。「ブロックチェーンと暗号通貨への一般的な信頼はまだまだ低い。その原因は情報格差にあるに違いない」。そう考えたナポリ出身の新聞記者ジョルジオ・スクラは、2021年、暗号資産ジャーナリストに転身したのち、伊経済省の機関SMART&STARTから40万ユーロを資金調達して起業した。

いまスクラは、欧州精鋭の暗号資産ジャーナリストとして、15名のアナリストとともにブロックチェーンの世界に目を光らせている。彼は若くはない。ただ課金制を採らずに啓蒙に努める姿勢に、学生起業家にはない矜持がある。「ジャーナリズムとは、収益源を情報課金に置いた時点で、崩れていくものだ」。

おりしも昨年は欧州議会による暗号資産市場(MiCA)法案が可決されたばかりだ。

Decriptoのような監視活動の需要はますます高まっていくだろう。

3.ID.EIGHT:「キッチンの臭いがする」スニーカー

ファッション業界では、毎年240億足を超えるスニーカーが生産されている。その素材はサステナブルとはほど遠く、生産の過程で膨大な温室効果ガスを排出する。世界の温室効果ガスの1.4%はスニーカーによるものなのだ。

そういうことで世界にはもっとサステナブルなスニーカーが必要だ。

ID.EIGHTのスニーカーからは、キッチンの臭いがする。リンゴを食べるとき、皮と芯を捨てるだろう。パイナップルを食べれば、大きな葉が、ゴミ箱でずいぶん邪魔になる。なんとなくブランドコンセプトが、市井の嗅覚に近い。ブランドマネージャーは、ジュリアナ・ボルジッロ、女性である。見る人が見れば、キッチンのゴミ箱はインスピレーションのかたまりなのだ。

そのスニーカーは70%以上が野菜廃棄物などのリサイクル材料で出来ている。農業や工業廃棄物に由来する4種類のバイオベース新素材は、トウモロコシ(Bioveg)、リンゴの皮と芯(Uppeal)、イタリアワインを連想させるブドウの茎や皮(Vegea)、パイナップルの葉(Piñatex)である。パッケージのリサイクル段ボールは、種子が詰め込まれていて、土に還って萌芽する。

ジュリアナたちは、農業および工業廃棄物の世界的課題へ、実に240億足分の新しいソリューションを提案しようとしている。Pitti Immagineにおける受賞やil Green Product Award 2020受賞しており、廃棄物に目を向けたことで、協業する企業の選択幅を広げたことが評価される所以だ。つまりは世界のバイオベース素材研究に切り込んでいく企業力があるかどうか、その現象物がスニーカーであることよりも、真価はそこに問われるのだ。




長谷川悠里(はせがわ・ゆり)エルゴン・ジャパン代表取締役。慶応義塾大学非常勤講師。イタリア ボローニャ国立大学卒業。ミラノ国立大学大学院修了。司馬遼太郎奨励賞。大学ではイタリア文学および文化論の講師として教壇に立つ。10代半ばでイタリアへ渡り、学生時代に起業。その後イタリアの国立研究機関に務める傍ら、貿易商社を創業したアントレプレナー。2018年イタリアで50年の歴史を持つグローバル・コスメティックブランド「eLGON」の日本国内での正規直営店を運営するエルゴン・ジャパン設立。著書に『ダンテの遺言』(朝日新聞出版)ほか。

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