事業継承

2024.04.22 12:00

組織変革から地域共創型まで。新しい事業承継100社(後編)

Forbes JAPAN編集部

たねや 地域活性|観光

代表者|山本昌仁 設立年|1972年
1872年に和菓子屋として創業し、1970年代から洋菓子部門としてのちにクラブハリエとなるバームクーヘン製造を開始。2011年に山本氏が4代目社長に。15年に旗艦店「ラコリーナ近江八幡」を開くと、7年連続で滋賀県一位の集客力を誇る施設に。広大な土地に工房やカフェなどがある。22年の延べ受け入れ数は約321万人で、地域経済に貢献。

CATEGORY 06|レガシー産業を変える

デジタル化など社会環境の変化に伴い、古い産業にも新たな付加価値の創出が求められている。製造現場のDXや新たなブランドビジネスを通じて、業界に新風を吹き込む。長期視点で組織を変革する経営者たちが登場している。

岡野バルブ製造 新規事業|DX

代表者|岡野武治 設立年|1936年
発電所向けバルブの国産化に初めて成功したニッチトップ企業。東日本大震災における原発事故を機に、既存事業一強を脱して装置産業全体でDX化を推進。4代目社長のもと、21年に経営体制を刷新し、新規事業や地方創生などに事業領域を拡大。近年は東京・日本橋や沖縄にコミュニティ拠点を設けるなど、「未来型ものづくり企業」を提唱する。

西村プレシジョン 出島型|地域共創

代表者|西村昭宏 設立年|1993年
前身の西村金属はチタン加工を行う町工場。営業担当として入社した昭宏氏がHP上で自社技術を公開し、取引のなかった他業界での顧客開拓に成功。同時に自社ブランドとして厚さ2mmの極薄老眼鏡「ペーパーグラス」を製造する同社を設立。地元企業と共同で「チタンクリエイター福井」ブランドを立ち上げるなど、地域活性化にも貢献。

ライフスタイルアクセント 出島型|継業

代表者|山田敏夫 設立年|2012年
熊本市内の老舗婦人服店「マルタ號(ごう)」の次男。ハイブランドのOEM製造などを手掛ける全国の縫製工場とつながり、メイドインジャパンの工場直結ファッションブランド『Factelier(ファクトリエ)』を立ち上げる。EC販売が基本だが、熊本本店は実家の店舗に設ける。家業は継いでいないが、「継業」として日本の繊維産業の活性化を図る。

リビングハウス アイディア|事業再生|地域一体型

代表者|北村甲介 設立年|1942年
全国に36店舗を展開するインテリアショップ。実父の経営する同社へ入社、2011年に代表取締役社長となった甲介氏が、業界初のスリッパ専門店や店舗の一角で英会話学校を開設するなど、特異なアイディアを次々とヒットさせて売上を伸ばす。現在はインテリアや海外ブランドの企画・販売のほかに地方百貨店や家具店の再生でも注目されている。

石坂産業 地域一体型|ビジョナリー(長期思考)

代表者|石坂典子 設立年|1971年
産業廃棄物処理業。家業が批判の対象となった1999年のダイオキシン報道を受け、先代である実父へ社長交代を志願。2002年の就任時より「脱産廃宣言」を掲げて3S(整理・整頓・清掃)を徹底した社内改革を実施。産廃物の減量化・再資源化率98パーセントを達成し、同業者をはじめ海外からも視察団を迎えるなど、周囲から愛される企業として復活させた。

カミナシ 出島型|プラットフォーム|DX

代表者|諸岡裕人 設立年|2016年
非デスクワーカー業務を効率化する現場DXプラットフォーム「カミナシ」を開発。リクルートスタッフィングを経て2012年 に、父が創業した空港関連サービスを手掛ける「ワールドエンタプライズ」に入社。LCCの予約センターやJALの羽田機内食工場の立ち上げ業務の中で感じた課題を解決するため、16年に前身となるユリシーズを創業した。

嘉穂無線ホールディングス DX|新規事業

代表者|柳瀬隆志 設立年|1950年
九州を中心にホームセンター「グッデイ」を軸にグループ化する同社では、先代から8年かけて計画的に事業承継を進行し、2016年に就任した3代目社長が社内DXを推進。早くからファブラボを運営するほか、気象データや販売データをAIに学習させて、仕入れを調整し、売上増・在庫減に成功。AIによるグループ企業の効率化で注目されている。

クアンド 出島型|スタートアップ

代表者|下岡純一郎 設立年|2017年
創業者の下岡は京都大学大学院卒業後、P&G、博報堂コンサルティングを経て2017年に福岡・北九州にUターンし、父の経営する建設会社の取締役に就任。 同時にITスタートアップである同社を創業。建設・製造現場の確認に特化した遠隔コミュニケーションツール「SynQ Remote」を提供し、レガシー産業のアップデートを図る。

生野金属 出島型|ディープテック|DX

代表者|小西康晴 設立年|1949年
創業77年の大阪府の製缶メーカー。3代目社長の康晴氏は、村田製作所で産業用ロボットの研究・開発経験を積んだのち、2005年に入社。06年にサービスロボットの開発・導入コンサルティング事業を行う会社「ロボリューション」を設立し、製造工程の自動化を実現。製缶業とロボティクスの知見で、製造業のシナジーを高めている。
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この記事は 「Forbes JAPAN 2024年4月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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