事業継承

2024.04.21 12:00

M&Aやサーチファンドも登場。新しい事業承継100社(前編)

COLUMN|地銀や自治体も注目の「サーチファンド」承継

新たな事業承継のカタチである米国発の「サーチファンド」で、日本でも後継者不在に悩む中小企業を承継する事例が出始めている。金融機関やM&A仲介業者などが独自のスキームを構築し、この動きを加速させている。元はサーチャーと呼ばれる経営者候補が、投資家から資金調達して自ら企業を探し、M&Aする手法だ。資金力が乏しい個人でも投資を受け、経営者になれる。最終的には事業を成長させ、上場や株式の買い取りなどで投資資金を還元する。

日本で初めてサーチファンドに取り組んだ山口フィナンシャルグループ子会社「山口キャピタル」では、2023年に初めて山口県内の企業と県外の経営人材のマッチングを実現した。2019年の1号ファンド開始から、これまで8件の承継事例がある。地銀8行などが出資する2号ファンドは約50億円規模に。1号ファンドでは30代のMBA保有者がサーチャーになることが多かったが、40-50代の多様なビジネス経験者も募集し、地域企業のニーズに幅広く応えられるようになっている。山口キャピタル社長の伊藤忠志は「中小企業経営の現場では、自身の経験を押し付けるのではなく、コミュニケーション能力が求められている」と語る。

同社は地銀グループのネットワークを生かして、承継後の企業の成長支援も手厚く行う。一方で、ファンドへの出資を検討する地銀などは増えてきたが、サーチファンド自体の認知度拡大が課題だ。昨年9月、同社は北九州市とサーチファンドを活用して事業承継を推進するため連携協定を結んだ。

伊藤は「まだサーチファンドは黎明期。地域産業を支える企業の事業承継の選択肢として広げていきたい」と語る。

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年4月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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