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2024.04.18 13:30

モノの劣化や酸化を光で検知。新たな測定技術を提供する「ケミルミ」の可能性 | 東北電子産業

山田が東北大学農学部に入学したときにはすでにケミルミが納入されており、装置を使って微弱発光をテーマにした卒業論文を書いた。以来、30年以上にわたり研究を続けている。大学卒業後、日本分光や科学技術振興機構(JST)での研究員を経て、91年に東北電子産業に入社。研究や装置開発も行いながら、顧客(ソフト)とものづくり部隊(ハード)をつなぐ存在として、分析条件の検討や測定などの顧客対応も担当した。

同社のケミルミ最新機。電子増倍管を用いた約50フォトン/平方センチメートルレベルまで検出可能。代表的な機種は3種類ほどで、価格は500万円から2000万円以上のものもある。主に国内外の大学や公設試験研究機関、大手企業の研究所などに約500台の納入実績がある。

同社のケミルミ最新機。電子増倍管を用いた約50フォトン/平方センチメートルレベルまで検出可能。代表的な機種は3種類ほどで、価格は500万円から2000万円以上のものもある。主に国内外の大学や公設試験研究機関、大手企業の研究所などに約500台の納入実績がある

山田は「今、追い風が吹いている」と語る。近年のリサイクル機運の高まりから、プラスティック材料の劣化測定のニーズが増加しているからだ。リサイクル材の劣化評価をすることで、再利用する際に混ぜるバージン材の比率を判断できる。また、ケミルミは世界最高感度のフォトン(光子)レベルの化学発光が検出可能という。従来法ではとらえられない初期の酸化劣化を検出できるため、開発期間の短縮にも寄与している。
装置についている引き出しのようなスポットに、検体を入れて酸化させる

装置についている引き出しのようなスポットに、検体を入れて酸化させる

課題は認知度の低さだ。そこで山田は知財戦略としてケミルミの測定法の標準規格に注力。18年には経済産業省の「新市場創造型標準化制度」を活用した国内標準化(JIS認定)、22年にはISO規格を取得した。

「クローズな特許ではなくオープンなJIS規格を取得することで『微弱発光を検出すると劣化がわかる』という市場を広げる狙いがあります。装置自体は同様のものはつくられてしまうかもしれない。しかし、サンプルごとの最適な測定条件は異なり、そこにはわが社で40年間蓄積したノウハウがあります。解析技術も含めて“ オンリーワン ”を提供している自負があります」
ケミルミは酸化が起こる素材であればどんなものでも測定可能
ケミルミは酸化が起こる素材であればどんなものでも測定可能
これまで、大学や企業の研究機関などへ約500台を販売、うち50台が海外だ。「世界的に高まるサーキュラーエコノミーの取り組みによって、リサイクル材を劣化評価できるケミルミの存在感はより高まっていくはず。唯一無二なこの装置でしか見えない未来があると思っています」


山田理恵◎東北大学農学部卒業後、日本分光に入社。87年から科学技術振興機構(JST)で研究員として微弱発光の研究に従事。91年に現会長で父の佐伯昭雄が創業した東北電子産業に入社、2008年7月から代表取締役社長。ケミルミ技術の標準化活動が認められ、23年度の産業標準化事業表彰・経済産業大臣表彰を受賞。

文=堤 美佳子 写真=佐々木 康

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年4月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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