山田は「今、追い風が吹いている」と語る。近年のリサイクル機運の高まりから、プラスティック材料の劣化測定のニーズが増加しているからだ。リサイクル材の劣化評価をすることで、再利用する際に混ぜるバージン材の比率を判断できる。また、ケミルミは世界最高感度のフォトン(光子)レベルの化学発光が検出可能という。従来法ではとらえられない初期の酸化劣化を検出できるため、開発期間の短縮にも寄与している。
課題は認知度の低さだ。そこで山田は知財戦略としてケミルミの測定法の標準規格に注力。18年には経済産業省の「新市場創造型標準化制度」を活用した国内標準化(JIS認定)、22年にはISO規格を取得した。
「クローズな特許ではなくオープンなJIS規格を取得することで『微弱発光を検出すると劣化がわかる』という市場を広げる狙いがあります。装置自体は同様のものはつくられてしまうかもしれない。しかし、サンプルごとの最適な測定条件は異なり、そこにはわが社で40年間蓄積したノウハウがあります。解析技術も含めて“ オンリーワン ”を提供している自負があります」
これまで、大学や企業の研究機関などへ約500台を販売、うち50台が海外だ。「世界的に高まるサーキュラーエコノミーの取り組みによって、リサイクル材を劣化評価できるケミルミの存在感はより高まっていくはず。唯一無二なこの装置でしか見えない未来があると思っています」
山田理恵◎東北大学農学部卒業後、日本分光に入社。87年から科学技術振興機構(JST)で研究員として微弱発光の研究に従事。91年に現会長で父の佐伯昭雄が創業した東北電子産業に入社、2008年7月から代表取締役社長。ケミルミ技術の標準化活動が認められ、23年度の産業標準化事業表彰・経済産業大臣表彰を受賞。