今、求められる従業員の幸福を推進する「CHO(最高幸福責任者)」

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近ごろは、職場で幸福感を感じるのが難しくなってきている。従業員の幸福度は、過去3年間と比べると10倍のスピードで低下していることが、人事ソフトウェアを提供するBambooHR(バンブーHR)の調査で明らかになった。

解雇されるのではないかという不安が常につきまとうようでは、幸せな気持ちで働くことは難しい。AI(人工知能)によって駆動される新しい経済や業界のなかで、競争に負けまいとする各社は、重要度の低い部署に投じていたリソースを、生成AI重視のプロジェクトや採用へと再配分している。

米国心理学会(APA)で発表された研究によると、自らの仕事に対して否定的な姿勢を示す労働者たちは、自分は同僚や雇用主にとって取るに足らない存在だと考え、上司からこと細かくコントロールされているような感覚を抱き、職場で高く評価されていないのではないかと不安を覚え、新たな技術が登場すれば今後10年以内に不要な存在になってしまうのではないかと怯えていることが明らかになった。

このような職場の士気低下によって世界経済が被る生産性の損失は、8兆8000億ドル(約1320兆円)に上る。仕事に対する満足度の低下に立ち向かい、従業員の体験を向上させる1つの手は「最高幸福責任者(CHO:Chief Happiness Officer)」を新設することだ。

CHO(最高幸福責任者)の役割とは

多くの企業が、従業員の幸福度向上を専門とするエグゼクティブレベルの役職を新設している。Business.comの記事によれば、グーグル、コカ・コーラ、TikTok、EY、Deloitte(デロイト)、SAPなどがそうしたポジションを設けている。

CHOの仕事としては、従業員の幸福度を測定する、潜在的な懸念材料を特定する、職場の士気向上に向けた計画を立案する、効果的なリーダーシップとコミュニケーションに関する研修を実施する、従業員の定着と生産性、パーソナライズされた体験に焦点を当てるなどがある。

CHOに求められることは主に、心の知能指数(EQ)や共感力が高いことに加え、確かな社会的スキルとコミュニケーションスキルだ。そして、従業員が仕事に対して否定的な感情を抱いている兆候を見抜く力も必要だ。そうした兆候には、欠勤が常習化している、締め切りを守らない、会議に遅刻する、早退する、同僚などに対して攻撃的になったり非常識な態度をとったりするといったものがある。
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翻訳=遠藤康子/ガリレオ

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