(c)2024「四月になれば彼女は」製作委員会
春からの手紙は、その後もチェコのプラハや北大西洋に浮かぶ火山の島アイスランドからも届く。どうやら春は、かつて俊と出かけようとしていて叶うことのなかった場所を旅しているようだった。
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一方、弥生の誕生日。俊は祝いのワインを開けようとするが、弥生がワイングラスを割ってしまう。2人の関係に亀裂が生じていることを暗示する象徴的なシーンだ。一緒に住んでいるとはいえ、互いの部屋は別にしていた2人。次の朝、俊が弥生の部屋を覗くと、彼女はいなくなっていた。「愛を終わらせない方法、それは何でしょう」という言葉を残して。
かつて恋人同士であった俊と春にどんな別れがあったのか。時を経てどうして春は俊に手紙を送ってきたのか。そして、結婚を前にしてなぜ弥生は俊の前から姿を消したのか。それらの「謎」は、愛するとはどんなことなのか、人と人の絆とは如何なるものなのか、深く考えさせられるドラマへと繋がっていくのだった。
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原作者の川村元気は、映画化にあたり、そもそも小説を書くに至った理由について次のような言葉を寄せている。
「『恋愛がある』ことではなく『恋愛がない』ことを書くのだ。過去に恋愛をしていた様と、いま恋愛しなくなった様。同じ人間のふたつの時代を交互に描くことで、その〝差分〞が恋愛をかたどるのではないかと仮定した」
「四月になれば彼女は」という作品が、「恋愛映画」のかたちをとりながら、 愛の不在や愛の不可能性にまで言及しているのは、この原作者の言葉からも想像できる。そのような意味においても、この作品は凡百の恋愛映画とは一線を画しており、タイトルにも表れているように、類を見ない深い余韻を感じさせる作品となっているのだ。
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