永瀬:映画という存在自体に「幹」として、その方向性もあってほしいと常々思っているので。観客としてはわかりやすくないと見づらいかもしれないし、いつも観てる映画と違うと、スルーされるかもしれないんですけど。もしかしたらこういう作品こそ、本物だと感じてもらえたらいいですね。
──確かに一言ですべてが説明できることこそがすべてではないですものね。石井監督はその点についてどう思われますか?
石井:ただ日本の映画業界ではわかりやすく共感される作品が選ばれて、こういう企画が一番にピッと弾かれてしまう。
永瀬:ははは。
石井:なので舞台挨拶でも話しましたが、今作が完成したこと自体が奇跡だと思います。とはいえジャン=リュック・ゴダール監督の『勝手にしやがれ』とか『気狂いピエロ』とか、最初観た時に分かりづらい映画に「なんだこれ」という衝撃を受けてきたじゃないですか。そしてそういう作品が次の時代を切り拓いてきた経緯があります。
おこがましい限りですけど、私は監督としてそこに普遍性やポピュラリティを持たせないといけない。そういう役割を担っていると勝手に思っているので。私はそういう映画を少しでもたくさんの世界中の人に観ていただいて。次に作る映画は少しでも多くの予算をいただけるようになってほしい。そうすると若い日本のクリエイターたちも、「こういうのが、日本でもやれるんだ」という手応えを感じて自信になっていくと思うんです。
──おっしゃる通りだと思います。公開までまだ時間がしばらくありますが、どのように楽しんでもらいたいですか?
石井:今回はるばるベルリンまで呼んでいただいたことで、世界中の人にたくさんアプローチできたので、この勢いが伝わっていけばいいなと。日本公開はまだ先ですが、この期間を使って原作を読んでいただくなどして、公開に備えてほしいなと思います。
永瀬:あえてここでは言えませんけど、監督が散りばめたギミックがあるので最後の最後まで、映倫マークが出るまでみてもらえたら。そこで「なんかある」ということだけを先にお伝えしておきます。
ベルリン国際映画祭で初上映された映画『箱男』は、2024年全国公開される。(公式サイトはこちら)
出演:永瀬正敏 浅野忠信 白本彩奈 / 佐藤浩市
監督:石井岳龍
原作:安部公房「箱男」(新潮社)
プロデューサー:小西啓介、関友彦
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