石井:そうですね。スマホで文字を打つという方が今の時代として、よりリアルなんでしょうけど。あえて今回映画の中ではスマホは映し出さないようにしていて。「箱男」がシンボリックにスマホの世界みたいなものなので。俳優さんにそれぞれ書いていただいた文字を使用しています。
永瀬:僕の手記のところは、僕自身が書いてます。
──永瀬さんもプロとして写真撮影をすることで有名ですが、役作りする上で役立ったことはありますか?
永瀬:今回に関しては、僕も普段写真を撮影していることで「わたし」が元々カメラマンだったというところのリアルさが出てるかもしれません。マイナスからキャラクターを構築する必要がなくて済んだということですね。そして今もインタビュー中の様子を撮っていただいてますけど。撮る側の心情というのも、十分に理解できますから。箱の外にいた男が箱の中に入っていくという点に、理解できる部分は大きかったです。
誰もが主人公「わたし」の側面を持っている
──偽医者にとってのパートナーでありながらも、それぞれの「わたし」にとってキーパーソンとして描かれる一方で原作で素性のわからない謎の存在であった葉子をどう肉付けしていきましたか。石井:脚本は以前からはものすごく変わってます。俳優さんでもありながらも、永瀬さんや浅野忠信さんらについては、重要なクリエイターの一人だと考えています。今回出演の御三方の演技プランやアイデアを共有してもらったことで、有効なコラボレーションができたと思っております。
永瀬:葉子さんと「わたし」の関係性。これって観客も含めたみんなの関係性に関わってくると思うんですよ。
石井:原作でも、あるところから突然ラブストーリーの要素を帯びてくるんですよ。なんでこの話が急に恋愛に変換していくのか、謎の部分です。そこの鍵を握っているのが、今回演じてくれた白本彩奈さん。原作では、セリフや役割しか書いてないんです。掴みきれなくて苦闘しました。そういう意味では今回来られなかった白本さんとの共闘です。
──ネタバレになってしまうので、具体的には言えないですがあるシーンで箱男の覗き窓を逆に覗き込んでいう台詞にハッとさせられてしまいました。
永瀬:これからが楽しみな役者さんですよね。
──役者陣の方とも一緒にクリエイションしていくプロセスがあったということですよね。 どんな意見交換がなされていたのでしょうか?
永瀬:監督から様々なヒントをいただいて。それが僕にとっては重要でした。現代性を考えたリアリティの一つとして、「箱男」の目から覗けるサイズが丁度、スマホのサイズだと同じくらいだという言葉をいただいて。それがとっても何か自分にとっては大きくて。そうなんだと、気持ちを保ちながら、僕は現場に行きました。