会場にはバナナの葉で包んだスリランカのランプライスやネパールのバターチキンカレー、トルコのドネルケバブ、キューバサンドのほか、フォー(ベトナム)やパッタイ(タイ)、ホッケンミー(マレーシア)、台湾ラーメンなどの19の各国料理のブースが並んだ。
子供連れの家族も多く、地元市民の祭りであることが感じられ、外国籍の住民の姿も見られた。特設ステージでは、サンバやインド舞踊、ケルト音楽の演奏などがあり、各国のエスニックグッズを並べた物販ブースもあった。
大学生たちが食フェスを開催した理由
このフェスを企画・運営したのは、慶應義塾大学公認学生団体「S.A.L.」のメンバー有志で、「川口市を多文化共生都市のロールモデルにしたい」との思いから立ち上げた「EthniCity Kawaguchiプロジェクト」の学生たちだ。代表を務めるのは八重樫海斗さんで、川口市の出身。小中学時代は地元の学校に通っていたそうだ。昨年10月にこの企画を思いつき、数カ月後には実現してしまった。とにかくその行動力には驚かされた。運営には20名くらいの学生が関わっているという。フェスの終了後、八重樫さんに話を聞いた。
「来場者数は飲食ブースの売上などからみて、延べ1万人以上はいたと思う。学生からご年配まで、あらゆる年代の人たちにご来場いただき、さまざまな国籍の地元在住の外国人も数多く見受けられた。60万円の売上があった店の話も聞いた」
埼玉県の南端に位置する川口市は、荒川を隔てて東京に接しており、都心への通勤にも便利なベッドタウンとして知られているが、最大の特徴は、外国人住民の多さである。
川口市がこのような多国籍タウンへと変貌していくのは、いまから30年前の1990年代頃から。外国人登録者数が初めて1万人を超えたのが2000年で、2023年には3万9553人と4倍に増加。その内訳は、人口順で中国、ベトナム、フィリピン、韓国、トルコなどで、市の総人口の6.5パーセントを占めており、全国で最も外国人住民の多い自治体となっている。
いまから10年以上前の2012年に策定された「川口市多文化共生指針」では、同市は「江戸の昔から鋳物や植木などの産業を核に」「昭和50年代以降は首都圏の経済を支える人口集中が進み、『キューポラのまち』から『住みよいまち川口』へ」と発展を遂げたが、「近年は社会のグローバル化を反映して外国人住民も年々増加の一途」だという。