電子契約を導入しても「7割は紙の契約書」 歯がゆい現実と対策とは

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電子帳簿保存法の改正などで、税務関係の書類の電子データ化を推進しようという政府の思惑とは裏腹に、契約書をすべて電子化している企業は全体の1割に満たず、半分以上が紙という企業は8割近い。自社の態勢は整っていても、取引先が紙のみの対応だと電子化は進まない。この状況はしばらく続くだろう。そこで鍵になるのが、紙と電子の橋渡しをしてくれるサービスだ。

企業のDXサービスを展開するSansan(サンサン)は、契約業務に携わる800人のビジネスパーソンを対象に「紙の契約書に関する実態調査」を実施した。それによると、電子契約書を導入している企業は全体の約7割あったが、おもに取引先が電子化されていないために、実際に取り交わす契約書の76.1パーセントが紙だという。紙の契約書を使う頻度が多いのは、建設・不動産をトップに、卸・商社、運輸・物流・金融といった昔ながらの保守的なイメージの強い業界が目立つが、IT業界においても紙の契約書を使っている企業は56パーセントにのぼった。

昔はすべて紙だった。だから紙のままでも問題はなかろうと思われるが、紙の書類の管理に課題を感じている人は6割を超えている。とくに、紙の契約書の契約内容を調べたいとき、当該契約書を探し出すためにかかる時間が、1人あたり月に10時間という「無駄」を強いられていることがある。DXうんぬんの以前に、紙の書類には本来的に問題があったわけだ。

契約書の管理には契約管理台帳を使うのが普通だが、台帳を作っていない、またはわからないと答えた企業が50.3パーセントあった。また、台帳はあるものの、きちんと管理されておらず課題があるという企業が64パーセント。とくに契約更新に関する記載が少なく、契約期間の管理ができていないという。

電子化をすれば、たとえば契約内容の検索のために出社してファイルを片っ端から開いて見るといった手間をかけず、理論上はリモートでも一発で行える。台帳も電子化すれば、紙の台帳の問題点も大幅に改善されることは容易に想像がつく。
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電子化したくてもできずに歯がゆい思いをしている企業や担当者が多いことが、この調査から見えてきた。そもそもDXの意義を理解していない企業経営者も多く、すべての取引先が電子化されるまでにはまだまだ時間がかかりそうだ。そこでつなぎの対策として、紙の契約書や契約管理台帳を電子化して契約書データベースを作ってくれるサービスの利用が考えられる。コストの問題もあろうが、紙の契約書のスキャナ保存といった面倒な作業も、丸投げできればずいぶん楽だろう。

プレスリリース

文 = 金井哲夫

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