北米

2024.03.08 14:30

DEIが広げるアメリカ社会の亀裂

この運動は、黒人差別撤廃から黒人優遇へ進化していくとともに、DEIが合理的なものから倫理的なものへと変質していった。このDEIをめぐる意見対立があるなかで、ハマス対イスラエルの戦争が起こった。ハマス支持、イスラエル批判、DEIを擁護する論調を張るグループの多くは、少数グループ(黒人)と、倫理的に贖罪意識をもつ白人たちから構成されている。
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国内政治的には、民主党左派だが、バイデン大統領がイスラエル支持を明確にしているため、今年の秋の大統領選ですんなりバイデン支持になるとは限らない。

一方、イスラエル支持の勢力は、DEI批判勢力と重なる部分が大きい。パレスチナ支持がイスラエルせん滅を狙う「反ユダヤ主義」(anti-Semitism) であるとして、これを取り締まるように大学に要求している。そして、多くの大学、多くの企業で採用されているDEIが教育や企業経営をゆがめているという主張をしている。政治の世界では、共和党右派でトランプ支持者と重なる。

アメリカ社会には新たな亀裂が走っている。これまで合理的なDEIの推進等でなんとかバランスを保ってきた人種間問題に亀裂が走り、11月に迎える大統領選挙の行方にも影響を与えようとしている。
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伊藤隆敏◎コロンビア大学教授・政策研究大学院大学客員教授。一橋大学経済学部卒業、ハーバード大学経済学博士(Ph. D. 取得)。1991年一橋大学教授、2002〜14年東京大学教授。近著に、『Managing Currency Risk』(共著、2019 年度・第 62 回日経・経済図書文化賞受賞)、『The Japanese Economy』(2nd Edition、共著)。

文=伊藤隆敏

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