しかしこうした減速は、そうしない企業にとっては利点となる。予想以上に時間がかかるため、お金を無駄にするかもしれないと心配する一方で、それを最後まで押し通した者たちは、しばらくの間、この分野を独り占めできることになる。そうした者たちにとっては朗報なのだ。
また、長期的な代替技術のアプローチに賭けているテスラにとっても朗報だ。多くの人が、テスラのアプローチはリスキーで、おそらく実現にはかなりの時間がかかるだろうし、テスラによる最新の「ほぼニューラルネットワーク」への書き換え報告も心強いものではないものの、いつとは言えないどこかのタイミングで成功するかもしれないと感じている。もしそうなれば、テスラは非常に有利な立場に立つことになり、先行する競合他社もほぼいないことになる。
同じく中国企業にとっても朗報だ。現在は中国市場に焦点を当てているが、将来的には欧米市場への進出を目指すだろう。もちろんしばらくは政治的な状況によって妨げられるかもしれないが。欧米市場に進出するとなれば、パートナーを求めることになり、独自のプランを持っていない企業が多ければ多いほど、中国企業にとっての潜在的なパートナーは増えることになる。アップルもその1つになるかもしれない。アップルは、ほとんどの製品で行っているように、ソフトウェアスタックを取得し、中国のメーカーと契約してクルマを製造することができる。アップルは自社のプロジェクトが成功するまでの道のりが長すぎると考えたのかもしれないが、動作するソフトウェアとセンサーのスタックを現金で購入できるなら、状況は変わるかもしれない。
賞賛を集めた『イノベーションのジレンマ』では、業界破壊の物語が何度も語られている。このような場合、既存のリーダーが新しい業界で生き残ることはほとんどない。これは、彼らが無能なせいで変化に気づけなかったり、新技術を開発できなかったりするからではなく、彼らが舵取りをしなかったり、できなかったりするからだ。彼らは、新しいテクノロジーは脅威ではなく、後からいつでも対応できるという判断を下す。そして、彼らは消えていく。なぜなら、それはたいてい(いつもではないが)間違った予測だからだ。
自動運転への適応は一朝一夕にできるものではなく、それを計画している者は危険を承知で計画を立てているのだ。
(forbes.com 原文)