CESでは、起業から3年以内のスタートアップが集まるエリア「エウレカパーク」の重要性が年々高まってきている。主催であるConsumer Technology Association(CTA)がメディア向けツアーを行なっていることからも、その注目度の高さがわかる。2024年は出展社数は400増え、1400社がエウレカパークにブースを出展していた。
フランス、イタリア、オランダ、台湾、イスラエルなど、世界各国のスタートアップが参加する中、韓国からはサムスンやLGなど国を代表する企業が抱えるラボもエウレカパークへ出展していたのが印象的だった。日本からはJETROがリードし、33社が出展した。クリーンテック、XR、VR、サステイナビリティ、ライフスタイルなどを扱うスタートアップが並ぶJAPANパビリオンは大人気で、昨年と比べて明らかに人が多く、コミュニケーションの熱量も高かった。
日本だからではない、質が高いから注目された
JAPANパビリオンの担当者であるJETROの樽谷範哉氏によると「日本だから注目されているのではなく、質が高いから注目されたと実感しています。フレンチテックやコリアンテックが100社を超える出展ある中、日本の33社出展は少ないように感じてしまいますが、日本のスタートアップの中で厳選された企業が集まったことで、それぞれの革新性を際立たせることができたと自負しています。中にはCESのイノベーションアワードを受賞したスタートアップも含まれています」『オーガナイズされたカオス』というコンセプトを設け、各分野ごとの革新性が伝わるよう展示は整理した。社名よりもどんな製品なのかキャッチコピーが目立つように工夫し、遠くからでもどのような展示なのかわかりやすくなるようにしたという。
また、中央に設けられたステージで行われたピッチコンテストも注目を集めた。もちろん使用する言語はすべて英語で、通訳がいるわけではない。
「ピッチコンテストは、集客の促進とスタートアップの訴求力を高めるため今年からスタートしました。自国だけでなく韓国や台湾など、各国のスタートアップにも参加してもらい、交流を深める機会も設けました。それが功を奏したのか、通路に人が溢れるのではないかと心配するほどの集客で、こちらが驚いたほどです」
日本のスタートアップはPRが苦手という印象を持っている方もいるかもしれませんが、実はかなり進歩していると樽谷氏はいう。解決したい問題やビジネスモデルをはっきりと訴求できるようになっているのだ。
さらに樽谷氏は、日本のスタートアップにとってグローバル市場では、PRだけでなくメンターの存在も重要な役割を果たすと語る。
「グローバル市場に打って出るには、チームにネイティブがいることも大切です。日本人だけのチームにはない視点を得ることができ、より確度の高い市場へのアプローチが可能になるからです」
JETROはこうした動きに対応すべく、メンターのプールを多数確保しており、日本のスタートアップとのマッチングを推進している。JAPANパビリオンのにぎわいは長期的な戦略とスタートアップの努力が実を結んだ結果なのだろう。