CESに初出展した資生堂の狙いと成果
また今年は、化粧品業界大手の資生堂もCESに初出展した。同社はスマートフォンを用いて「自分の顔の未来」を予測し、肌の状態に合わせた適切な対策を提案するツールを展示した。ツールは画像分析でくすみ、たるみ、水分量、シワ、均一性の5つのポイントを評価し、将来的に注意が必要な部分を指摘する。実際に試してみたところ「たるみには強いがくすみに注意」という診断が得られた。ここから抗酸化対策を推奨するなど具体的なアドバイスが得られる。
このシステムの中核となるのは、人間の「鼻」の骨格を利用した新技術だ。鼻の骨格は胎児の発育3週目から形成され、10代で完成し生涯変わらない。そのため、遺伝的特徴や呼吸能力などの予測に利用できることがわかったのだという。
他にも肌に負担をかけずに状態を良くするプロのマッサージ手法をARで学ぶ技術、店頭向け技術「Beauty AR Navigation」も発表した。
出展の理由について、資生堂のブランド開発研究所グループマネージャー中西裕子氏は「私達は元々、化粧品研究・サイエンスに関わる分野の研究が中心でしたが、コロナ禍で社内でもデジタル分野の研究が進み、サイエンスとデジタルの融合を図る研究が推進されるようになりました」と語る。
また同社が選んだのは一般的な出展ブースではなくホテルの宴会場のような小さめのホールだったが、この小規模な場所を選んだメリットも大きかったという。
「こうしたタッチ&トライは、一対一のやりとりが重要です。人が多い会場よりも確実に我々の研究や商品の内容を伝えることができました」
取材時点で2日間で約300人が肌予測を体験したという。資生堂の売上の約4分の3がグローバル市場ということもあり、今後もCESのような世界的なイベントへの出展を積極的に行なっていきたいと中西氏はいう。
「出展に対する反応は非常にポジティブで、特に鼻の骨格から肌年齢を予測する技術が好評でした。年齢、性別、人種を問わないこともよかったのかもしれません」
2月には、この技術を活用したアプリが日本でも利用可能になる予定だ。資生堂は従来、30代以降をターゲットとしたハイブランドのイメージがあるが、この新技術により世界の若年層の間でも人気が高まっていくかもしれない。