テクノロジー

2024.02.28 09:30

CO2ほぼゼロ、飛行機の次世代燃料は「アンモニア」

Getty Images

尾川:農産物などから作られるバイオSAFに比べ、e-fuel由来のSAFは価格が高いのが現状だと思います。航空会社がそれを買うメリットは何でしょうか。
 
ロバート:価格は高いかもしれませんが、CO2排出をほぼ100%削減できるという点で優れており、規制市場や独自の要件をもつ航空会社からの需要は引き続き増加しています。また、バイオSAFは農作物を原料とするため食料不足を加速させることにつながる可能性があります。いくつかの地域では、農作物のバイオ燃料への使用を禁止する動きが出始めています。
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ただ、場合によっては、私たちもバイオ燃料を活用する必要があるかもしれません。それは、低コストの再生可能エネルギーが得られる場所でしかe-fuelのSAFを生産できないからです。今後はハイブリッドの生産アプローチが必要になります。現状の課題は、採算の合うSAF製造プロジェクトをどれだけ立ち上げられるかです。

CO2は国内供給、アンモニアは輸入で

尾川:日本政府も2030年から国内の空港で提供する航空燃料の10%をSAFにすることを義務づける方針で罰則も設けられる見通しです。日本市場の展望を教えてください。
 
ロバート:先日、日本に行ったときに、e-fuelの輸入に対する規制があることを知りました。SAFの製造において、日本は一部の場所を除き、低コストの再生可能エネルギーを得るのは非常に難しいため、これは驚きでした。ただし、そうした状況下では、オーストラリアなどから輸入されるグリーン水素を活用したり、アモジーの技術を使用してアンモニアから作られる水素を活用したりすることになる可能性があります。アモジーとの提携は、日本やアジアでの現地生産プロジェクトに柔軟な選択肢をもたらしてくれます。

私たちは日本に国内生産のe-fuelを供給することで、日本のエネルギー安全保障と脱炭素化に貢献したいと考えています。

マシェク:SAFの原料となるCO2は、日本国内の工場などから排出されたものが使用される一方、水素を生成するためのアンモニアは主に輸入に頼ることになるでしょう。アンモニアは大規模製造が最も経済的だからです。有力な輸出元の一つがアメリカのブルーアンモニアを製造する企業です。
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アメリカでは、既存アンモニア生産施設の脱炭素化を急速に進める方向性になっており、既存プラントから出るCO2を回収して地下に貯蔵した場合、1トンあたり85ドルの税額控除が受けられます。また、世界中のGW(ギガワット)以上の大規模な水素プロジェクトの約半分が主な出力としてアンモニアを生産する予定です。将来的にはアンモニアが、LNGに代わる一大エネルギーになるとみています。


Infinium(インフィニウム)◎再生可能な電力と廃棄された二酸化炭素を使用して作られる新しい合成燃料e-fuelを製造するアメリカのスタートアップ。e-fuelは既存のトラック、飛行機、船に使用することができ、化石燃料に比べて有害な二酸化炭素排出を大幅に削減することが可能。三菱重工やAmazonなどが出資。

Amogy(アモジー)◎船舶、発電、重輸送など、二酸化炭素排出削減が難しい産業の脱炭素化を可能にする完全統合型のアンモニア発電システムを開発するアメリカのスタートアップ。三菱重工や三菱商事、AmazonのClimate Pledge Fundなどが出資。

尾川真一(おがわ・しんいち)◎スタンフォード大学客員研究員としてクライメートテックやカーボンクレジット市場を研究。元テレビ局記者。

文=尾川真一 編集=露原直人

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