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サイエンス

2024.04.04 14:15

「キリスト磔刑の現場」に新説 学会を仰天させたある考古学者の提言

(画像提供:Jeff Jacobs, Pixabay)

エルサレム南部のアパートが立ち並ぶ閑静な住宅街の奥深くに、縦・横5マスの何の変哲もないコンクリート板がある。この板は芝生や他の植物に囲まれて、小高い庭園やテラスの上に水平に置かれている。この板のそばを散歩する人にとっては、目を引くような目立つものは何もない。装飾的な飾りもない。南側の縁に沿って「2005」と刻まれた日付のほかは、何も刻まれていないのだ。
 
しかし、2016年3月上旬のある晴れた朝、観光客の一団が静かに近づき、亡くなった愛する人の墓の前に立つ友人、あるいは家族のようにその石板を取り囲んだ。彼らにとってこの石板が意味のあるものであることは明白である。

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アカデミアに議論を巻き起こすテイバー博士の提言

そのうちの何人かは、墓の上に小さな石を置いた。これは、亡くなった友人や家族を讃えるユダヤ教の墓前の伝統であり、故人に彼らを忘れていないことを知らせる方法でもある。涙を流す人もいる。黙祷して頭を下げる者もいる。石板に手で触れる者もいる。また、この場所を記憶と後世に残すため、写真を撮る者もいる。

白い頭髪とあごひげを蓄えた初老の男性が先導して、年齢を感じさせないエネルギーとハキハキとした声で一行に静かに語りかける。しかし、この男性はラビでも司祭でもない。ノースカロライナ大学シャーロット校の教授で、キリスト教の起源と古代ユダヤ教を研究する著名な学者であり歴史家の、ジェームズ・テイバー博士である。

上の部屋を特徴とする建物の、ヘロデ時代の壁/石の部分の残骸の前に立つ、ジェームズ・テイバー博士。石の大きさがよくわかる(写真:ヴィクトリア・ブロードドン)。

上の部屋を特徴とする建物の、ヘロデ時代の壁/石の部分の残骸の前に立つ、ジェームズ・テイバー博士。石の大きさがよくわかる(写真:ヴィクトリア・ブロードドン)。


テイバー博士は古代第二神殿後期のユダヤ教と初期キリスト教に関する世界的権威の一人とみなされている。そして、この場所の地下にあるものについて、博士以上に詳しい人物はほとんどいない。発掘された内容については、最初の発見から20年以上経ってから世界中のメディアの見出しを飾った。

博士をはじめとする人々にとって、この発見は、間違いなく人類史上最多の人生に影響を与えた人物である、イエスの人物像と生涯を示す、最も直接的な考古学的証拠である。博士にとって、イエス・キリスト一族の墓として一般的に知られているこの墓は、生涯をかけた探求の大きな一里塚となった。しかし、この発見と博士の主張は、歴史上の他の考古学的発見の多くがそうだったように、学者たちの間に議論を巻き起こしている。
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翻訳=伏見比那子 編集=石井節子

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