経済・社会

2024.02.08 15:30

キーワードは共助資本主義。社会課題解決を起点に生まれた「新結合」

「30」のイニシアチブ誕生へ

髙島:今回の連携において大切なことは「同時多発的な成功事例」だと思っています。23年9月に開催した「共助資本主義マルチセクター・ダイアローグ」に多くの方々が参加されました。この熱量を起点に、必ずしも規模は問わずですがさまざまなイニシアチブが生まれて、そのうち何個かが小さな成功をつかむことがまずは第一歩として大事だと考えています。

小沼:僕が今回の座組みで新しいと思ったのは、企業側からの参加者がCSR担当者ではなく、経営層だったことです。これまで大企業とNPOの関係は単純化すると「支援」でした。金銭的、物資的な支援が多かったのです。それに対し、今回は「共助」という言葉に変わり、対等な立場で助け合う関係性になったことが画期的です。

例えば、シングルマザーや障がい者、難民など、働きたいけど働けない方々の支援をしているNPOがいる一方、企業には労働者不足の問題がある。であれば、企業側には労働力の確保が提供でき、NPOには人の自立や雇用機会提供につながるといったような、「お互いが助け合う」という座組みができるのではないかと思うんです。「支援」ではなく、それぞれのニーズを並べていくと、意外と自然体で面白い共創が生まれるのが、共助資本主義でいう「共助」なのではないかと思っています。

髙島:体験談でいうと、東日本大震災の復興時は、積極的な大企業やスタートアップ、数多くのNPO、自治体がさまざまなかたちで動いていました。その際には「公助」と「共助」の境界線が曖昧になって、境界を越えて一生懸命に動く人がいることを見てきました。有事にできた連携が平時からできれば僕らが解ける課題の量はかなり多くなるのではないかと思っています。

米良:日常的に課題解決に向かって、さまざまなステークホルダーが議論していけることこそ意義があると思っています。なぜなら、これまでは各セクターが分かれているがゆえに、何かが起きた際に一気に物事を動かせる人が限られていました。このプラットフォームで、日ごろから議論を進めて共通言語をつくっていくなかで、何かが起きた際の意思決定の速度も速くなる。スタートアップ的な課題解決手法が貢献できる機会も増えていくと思います。

小沼:現在、企業とソーシャルセクターが連携して社会課題解決に取り組むイニシアチブが15ほど生まれ、10月にはそのうちのひとつであるNPO法人フローレンスが主導する「こどもの体験格差解消プロジェクト」では経済同友会との協業の記者発表も行ないました。それ以外にも、難民人材活躍のプラットフォームや企業版ふるさと納税を活用したデジタル人材教育、子どもの貧困解決をはじめとした具体的なイニシアチブがあります。

髙島:24年には20から30のイニシアチブになると思います。このプラットフォームが日本における社会課題解決のインフラになるためには、関係人口が多くなっていくことが近道。その意味でも小さくてもしっかりと成果を出していくことが大切です。

小沼:
資本主義が立場の弱い人たちを取り残さずに、より良い社会をつくっていくためには、今回のような連携とそこから生まれるイニシアチブは本当に大事な取り組みだと思っています。

米良:根底にある「課題解決したい」というビジョンのために会社や組織が存在するはずなので、共に助け合うことは誰にとってもポジティブですし、解決の速度を上げることにつながります。この「共助」の取り組みが次々に起こることは社会にとっていいムーブメントだと思います。

髙島:世界中で資本主義のあり方や社会課題の解き方に悩んでいます。そのなかで「共助資本主義」は日本的と言えるのではないでしょうか。東北復興のような曖昧なものを曖昧なままに力を合わせて、境界線を越えて力を合わせていくというのは「日本モデル」になりえると思う。こうした連携が「日本的未来のカタチ」になれば、世界にとっても意味のある「新結合」になると思っています。

小沼大地◎新公益連盟理事。NPO法人クロスフィールズ共同創業者・代表理事。マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、2011年、ビジネスパーソンが新興国のNPOで社会課題解決にあたる「留職」を展開するクロスフィールズを創業し、現在に至る。

文=山本智之 イラストレーション=山崎正夫

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年2月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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