経済・社会

2024.02.08 15:30

キーワードは共助資本主義。社会課題解決を起点に生まれた「新結合」

小沼大地(以下、小沼):新公益連盟は、NPOや社会的企業のネットワーク組織で現在158団体が加盟しています。なぜ今という点では、中心にいる人が変わったことがあるのではないでしょうか。

新浪さんのようなグローバルな視座をもち、「社会課題解決ビジネスで事業成長と投資の好循環サイクルを生み出そう」「ソーシャルセクターと連携を」と提唱するリーダーが経済界の中心となり、髙島さんというNPOとスタートアップの両セクターに理解とネットワークがあるリーダーが一緒に旗を振っている。このふたりがいたからこその奇跡的な座組みにつながりました。

従来、社会課題解決といえばNPOの活動領域だという自認もありましたし、社会からもそう見られていました。ただ、最近では、大企業やスタートアップも標榜することで、誰がこの課題を解決するのか、わからない時代に変わってきています。社会課題が多様になることで、プレイヤーも多様化しました。そのなかで競争構造ではなく「お互い助け合いながら」解決しようというのは、日本的な素晴らしいあり方なのではと思っています。

米良はるか(以下、米良):社会課題解決と持続可能な成長を両立し、ポジティブな影響を社会に与えるスタートアップをインパクトスタートアップと定義して協会を立ち上げたのが22年10月。設立1年強ですが現在83社が参画しています。

なぜ、今という点では、髙島さんが指摘するように社会課題が多様化するなかでは、課題解決のための社会的コストを国や自治体が税金で賄う時代から、より実効的に効率性や効果を把握しながら、民間で解決できる領域を増やすことが重要だと考えています。社会課題が「山積み」だからこそ、大企業が解決できる方法、スタートアップ的に解決できる方法、NPOでしか解決できない方法で、それぞれが全力でアプローチしなければいけません。「共助資本主義」のプラットフォームができ、課題ごとにそれぞれの立場から議論する場が生まれたことは有意義だと思っています。

また、社会課題を起点に、大企業、スタートアップ、NPOで人材の交流が生まれることは大きいです。ノウハウなどの共有をはじめ、それぞれが多様な視点をもつことにつながり、最終的には課題解決にアプローチできるプレイヤーが増えていくことにつながるといいですね。

髙島:人材交流は重要ですね。例えば、日本の場合、経済と政治のバイリンガル人材が少ないため、政策提言についても、一生懸命動いているけどなかなか通らないということも多い。これは民間と政治の「間」だけに限らず、大企業とスタートアップ、営利と非営利、教育機関や医療機関といった「民間の間」でも橋が架かっていない。

民間の間でさえバイリンガル、トリリンガル人材が少ないのが実態。社会課題解決に向けて、本当は一緒に取り組んだほうがいいのに「共通言語」がないことがボトルネックになっている。経済同友会というプラットフォームをいかしながら、こうしたインフラをつくることで人材の交流ができることの意義もある。

米良はるか◎インパクトスタートアップ協会代表理事。READYFOR代表取締役CEO。2011年に日本初・国内最大級のクラウドファンディングサービス「READYFOR」をスタート。14年に株式会社化し、現職。内閣官房「新しい資本主義実現会議」民間議員も務める。

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文=山本智之 イラストレーション=山崎正夫

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年2月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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