しかし、コンピュータの歴史において、1つの節目となるのがこのタイミングであると筆者は確信している。その確信が正しかったかどうかは、数年後にはわかるだろう。
アプリとサービスのあり方も変化
アップルはApple Vision Proの発売を目の前にして、さまざまな準備を進めてきた。冒頭でも挙げたように、ARへの取り組みや音響を座標を持つ立体情報として扱う技術も同時に開発してきた(その一部は空間オーディオとしてサービスや製品に組み込まれている)。
このような動きはアップルだけではなく、さまざまな領域で散発的に進んでいる。例えばVR技術とARを技術を融合した複合現実のアプリケーションを構築する手法としてはWebXRという手法もあり、オーディオに関しても立体音響を実現する手法はデータフォーマットを含めて多数存在している。
Apple Vision Proが登場する意味は、散発的に存在する多様な空間コンピューティングに必要な要素技技術を1つにまとめている点にある。今後、ハードウェアの面ではクアルコム、サムスン、グーグルの3社が共同で新しい端末を開発し、年内に出荷される予定だ。
Apple Vision Proがスタート地点となり、世の中が動き始めることで、アプリやサービスも「空間」を意識したものに変化していくことになるだろう。
あらゆるメディアは空間で表現されるデータとなり、空間情報として処理され、ユーザーの視点で再構成(レンダリング)された結果を通じて、コンピュータと対話するようになる。
着地点はどこになるのか? それは誰にもわからないが、これから数年、少しずつ、しかし大きな変化が続いていくはずだ。