だが、アルコール入り、ノンアルコールを問わず、新しいブランドが規模を拡大するためには資金面でのハードルを乗り越えなければならない。そうした大きな制約を受ける他の新興の醸造所とは異なり、ゴー・ブルーイングは幸先がいいスタートを切った。共同創業者のジョー・チュラは、2018年に自動車販売向けのデジタルマーケティング会社2社を、自動車取引プラットフォームのカーズ・ドットコムに1億6500万ドル(約244億円)で売却。その経済的余裕によってチュラは完全に自己資金のみで会社運営が可能となり、立ち上げ当初から醸造のプロを雇ってレシピを模索し、契約醸造を避けることができた。
チュラはクラフトビールブームの初期を彷彿とさせる方法で、ゼロからゴー・ブルーイングを立ち上げた。2021年に法人化し、2023年初めには自社の醸造所とタップルーム(バー)をオープンさせ、オンラインでの販売も開始。「地球上で最高のノンアルコール/低アルコールのクラフトビールを造る」という使命を掲げて取り組んだ。品質へのこだわりは、立ち上げから3カ月後にクラフトビールのコンテスト「2023年ベスト・オブ・クラフトビール・アワード」で金と銀のメダルを獲得したことで証明された。
「発展途上の市場に参入するにあたり、低品質のクラフトビールで性急に事を進めるのは最悪だと最初からわかっていた。長い間、ノンアル/低アルのビールは皆が無視するような後回しの存在だったが、今は違う。消費者は素晴らしい味の製品を求めている」とチュラは言う。「消費者が当社のビールを気に入ってくれれば、規模を拡大できることはわかっていた。なので妥協することなく、賢明な成長に全力を注いだ」