恒星質量ブラックホールはどのようにして形成されるか?
ほとんどの場合、超新星爆発を起こす大質量星の中心核の重力崩壊によって形成される。「活動中」の恒星質量ブラックホールは、近くの恒星や惑星またはその両方の物質を降着(重力で引き寄せて落下)させていると、ESOのチリ・サンティアゴ事務所で取材に応じたザークは語った。これは恒星進化の自然の成り行きだと、ザークは続ける。
だが、この降着段階は、星の進化の一生の中で非常にすみやかに進行するため、降着が活発に進行中のブラックホールは極めて稀であるはずということがわかっているという。それでも銀河系には、これまで観測されているよりも、もっと多くの恒星質量ブラックホールが存在するはずだと、ザークは指摘している。
恒星の大半は連星
ザークと研究チームは2023年に発表した論文で、最近の地上および宇宙望遠鏡を用いたサーベイ観測のデータを用いて、カシオペア座にある変光星系「V1315 Cas」には、休眠状態の恒星質量ブラックホールは存在しないと判断している。論文は英国王立天文学会の学会誌Monthly Notices of the Royal Astronomical Societyに掲載された。この連星系は、かなり進化が進んだF型の主星と、B型の伴星で構成され、F型星のガスがB型星によって剥ぎ取られている。ザークによると、F型星の質量の大部分がすでに取り去られており、現在は質量移動段階の終了間近にある連星系が観測されている。当初はF型星の質量の方が大きかったが、現在はこちらの方が小さくなっているという。
このように連星の一方が質量を失っている場合には、質量降着が生じる可能性がある。ブラックホールへの降着が起きる過程では、このガスが加熱されて超高温になる。これによって発生するX線放射は、基本的に簡単に検出できる。
恒星がブラックホール(休眠状態のものでも)を周回しているとすると、この見えない質量によって引き起こされる軌道運動に起因するドップラー偏移(ドップラー効果によるずれ)が、恒星のスペクトル線に現れると、ザークは説明する。