最近、都内でもフランチャイズ店が増えている「甘蘭牛肉麺」という蘭州拉麺チェーンは、実は大阪の中国人企業家が始めたものだ。大阪の日本橋に本店がある同チェーンは、道頓堀や難波、天王寺などに展開しているが、東京では渋谷や新宿、飯田橋、神保町などにある。
蘭州拉麺は職人がひと碗ごとに麺を延ばしてつくる手間のかかる料理だが、同店ではSNSでの拡散を促すべく厨房に「撮影OK」と書かれており、その様子を動画で撮影するのが許されている。
日本人にもわかりやすいように、麺の種類やパクチーの有無、牛肉の枚数などをカスタマイズできる。飲食上のシステムは問題なく、ある方面では日本より進んでいるのだが、料理の中身が多くの日本人に理解されていないことが、彼らのいちばん苦戦しているところである。
大阪の日本橋には4つの中華食材店があった。東京でもおなじみの「友誼商店」の大阪店は2020年にオープンしたが、奥に小さなイートインスペースがあるところが、池袋や立川の店と同じである。
このように東京と大阪の「ガチ中華」の世界では同じようなことが起きている。面白いのは、東京の「ガチ中華」集中出店エリアが、ターミナル駅のある池袋や上野、インバウンドエリアの新宿、エスニックタウンの新大久保、日本語学校の多い高田馬場などに分かれているのに対し、大阪の難波から日本橋にかけては、これら4つの要素をすべてあわせ持っていることだ。だが、そうした類似性と共時性とともに少し異なる点もありそうだ。
そう思ったのは、この友誼商店が地下鉄日本橋駅構内の案内マップに広告出稿していたことを知ったからだ。こういう公共案内に「ガチ中華」が出てくることは東京ではまだ見たことがない。
もしかしたら、東京に比べ、大阪の「ガチ中華」オーナーたちは、地元に溶け込んでいるのではないだろうか。大阪の人たちの多文化社会の受けとめ方も、東京とは違うのかもしれない。この件についてはあらためて「ディープチャイナ関西支部」の人たちと語り合ってみたい。