新疆ウイグル料理の店が増えていることも東京と同じだ。
もともと大阪では難波にあるウイグルレストラン「ムカーム」(大阪市中央区道頓堀2-2-8)が有名だった。ここはウイグル人がオーナーの店で、本来の中央アジア風の羊料理やコシのある手延べ麺が日本人にも人気のラグマンが供される。
そして、いま増えているのは華人経営の新疆料理だ。国内外のメディアでは、新疆ウイグル自治区といえば人権侵害の話題ばかりだが、どうやら中国国内では華人好みの味つけの新疆料理が人気で、その影響から日本の「ガチ中華」オーナーたちの出店が増えているようなのだ。
日本橋の「刀郎餐厅」(大阪市中央区島之内2-17-7)や黒門市場の裏にある「糸路新疆大盤鶏」(大阪市中央区日本橋1-15-8)は華人経営の新疆料理の店だ。
後者の店名にある「大盤鶏(ダーバンジー)」というのは、新疆風の鶏肉のトマト煮込みで、麺を入れて食べるのだが、若い中国人カップルが大皿をよく注文している。華人経営だけに、ハラール認証はないかもしれないが、店には外国人客を意識して「No Pork」という英語の貼紙があった。
業態変更も激しい大阪のガチ中華
大阪でも、とにかく開業する店の回転が早く、次々と業態変更していくさまも東京と同様だ。1年前に来たとき、道頓堀のはずれに「張記韓炉烤肉」という吉林省延辺朝鮮族のオーナーの店があった。ところが、今回行くと、同じオーナーの店が日本の炭火焼肉屋に変わっていた。話を聞くと「延辺風の焼肉を知ってもらおうと思ったけどダメだった」という。
2年前、日本橋の住宅街を歩いていると「丹東特色大水餃」という垂れ幕があり、こんなローカルな店があるのかと驚いたことがある。丹東は遼寧省の北朝鮮との国境の町で、筆者にとってはなじみ深い土地だ。
店内は雑然として中国の田舎の食堂とまるで変わらない風情で、サワラ餃子が看板メニューだった。鴨緑江の河口に位置する丹東では海鮮餃子が名物で、黄海でとれる黄魚(イシモチ)やイカ、サザエなどの餃子が食べられるが、サワラ餃子は最も庶民的なメニューだ。
ところが、この店も閉店していて、同じオーナーが物流会社をやっていた。「ガチ中華」に差別化が求められるいま、彼らは新しい業態に果敢にチャレンジするものの、うまくいかなければさっさとやめてしまう。なんとも残念な話だが、それが彼らの商売のやり方なのだ。