食べると口から火を吹きそうな本格四川料理の麻辣火鍋から派生した「ひとり鍋」とも言うべきものである。シャープな痺れが際立つ中華山椒の花椒(ホワジャオ)とトウガラシの辛さをベースにした数種類の漢方スパイスを使ったスープに、さまざまな具材と麺を入れて煮た激辛料理だ。
大量の油が使われる四川火鍋に比べ、マーラータンは油控えめでスープもヘルシーということから、中国では若い女性に人気だ。
筆者は先ごろ、「東京ディープチャイナ研究会」なる任意団体を立ち上げた。この団体は、東京で食べられるチャイニーズ中華、詳しく言うとここ数年都内や近郊で急速に広がりつつある中国語圏の調理人の手による新感覚の中華料理、これをともに探索し、食べ歩く仲間を求めて結成したものだ。
現在、会員にはさまざまな職種の人間や学生などがいて、都内の個性的な中華料理店を訪ね、研究会の公式サイト「東京ディープチャイナ」に寄稿してもらっている。
具材をカスタマイズできるシステムの採用
立教大学で観光学を学ぶ江上ふくさん(21歳)もそのひとり。先日、彼女は池袋にある中国のマーラータン専門の外食チェーン「楊國福麻辣燙(ヤングオフーマーラータン)」を訪ねた。
池袋東口のサンシャイン通りの脇道にある
2018年12月東京に初出店した楊國福麻辣燙の創業は2008年。日本のみならず、北米やオーストラリアにも展開している中国の2大マーラータンチェーンのひとつだ。現在、中国各地に約6000店舗をフランチャイズ出店しており、都内では御徒町、高田馬場、大久保、池袋で展開している。
池袋東口のサンシャイン通りの脇道にある
江上さんは同店の特徴についてこう説明する。
「楊國福の特徴は、50種類を超える具材を自分で好きなだけ選べ、オリジナルのマーラータンをつくれること。ショーケースには、小松菜やパクチーなどの野菜、牛や豚などの肉類、エビや海鮮系の練りものなど50種類以上の具材が並んでいます。麺も具材と同じように並んでいるのですが、麺なしでスープだけで楽しむこともできます」
客は50種類以上の具材が並ぶ冷凍ケースからセルフサービスで選ぶ
前述したようにマーラータンは四川火鍋の派生形だが、複数の人間でひとつの鍋をつつくのではなく、「ひとり鍋」のように1人用のお椀に盛られているのが特徴だ。個食化が進む中国の都市部の食事情にもマッチしていることから、この10数年で中国全土に広まった。
さらに、チェーン化する過程で、自分好みの具材を選んでカスタマイズするスタイルが採用されたことから、中国の若い世代の支持も得たのである。その味について、江上さんは次のように語る。