2024.02.03 10:30

ビリオネアが細部にまでこだわって創ったホテル「ザ・ニュート」

「ザ・ニュート」の歴史は1680年にはじまる。この土地と邸宅は、政治家や自然保護活動家などの素封家の手にわたる間に、エステート(地所)として成熟の度合いを深めていった。建築や家具に限れば、18~19世紀に流行した英国特有のジョージアン様式ということになる。

現オーナーは、カレン・ルース(Karen Roos)氏と、通信業によって成功を収めた南アの大富豪で世界的な実業家である夫のコーズ・ベッカー(Koos Bekker)氏だ。ベッカー氏はForbes誌の億万長者ランキングにも名を連ねる。その彼らが敷地全体を整備し現在の形にするのに6年の月日を要した。完成したのは2019年のことだ。

趣の異なる客室、宿泊は2泊以上から

広大な敷地に比すれば、客室はわずかに40室であるから、スモールラグジュアリー・ホテルと呼ぶべきだろう。ゲストルームは、歴史ある邸宅「ハドスペン・ハウス」と旧馬小屋の客室棟「ステーブル・ヤード」の区画と、そこから電動バギーで走ること7~8分の距離にある旧酪農場「ファームヤード」区画の3カ所に分かれている。

「ファームヤード」の客室、「ストール・ルーム」。壁や天井には木材を多用している。この部屋から奥に4つの区画が続く。

客室をひとまとめにして語ることは難しい。なぜなら、邸宅ハドスペン・ハウス内部はもちろんのこと、高床式穀物倉庫や馬車用の車庫を改装したコテージがあり、片やファームヤードでは、元脱穀小屋やチーズ貯蔵庫が、ものの見事に改装されているからだ。間取りもデザインもどれ一つとして同じものはないが、共通しているのはどの部屋も、しっとりと落ち着きがあるということ。

「ストール・ルーム」を奥から逆に見たアングル。手前にはシャワーブースとサウナの区画がある。

宿泊料金は最上カテゴリーの客室に関しては、金土日なら3泊以上、月~木の平日は2泊以上でないと予約できない。他の客室は、金土日のみ2泊以上で、平日は1泊でも予約が可能になっている(ハイシーズンでは部屋のカテゴリーが最上級、上級、普通の3種類にわかれ、平日でも2泊以上。最上級は平日3泊、週末4泊、とかなり厳しくなる)。

宿泊料金には朝食のほか、ガーデンツアー、ローマン・ヴィラツアー、2つの体験型施設の見学、プールの使用、クリームティー(クロテッドクリーム付きのスコーンと紅茶)、夕方にアペリテイフのサイダー、客室内のミニバーが含まれている。かなり充実した内容であると言えよう。

サーモンやビーフのサンドイッチが美味しい。スコーンとクロテッドクリームも途轍もなく旨い。

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文=石橋俊澄(コントリビューティング・エディター)

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