11年にハワイに丸亀製麺を出店。国内では経験したことのない額の売り上げがあがるのを見て、グローバル市場の大きさに可能性を感じた。その後、丸亀製麺を各国で展開していくが、実はうどんにはこだわっていない。
「世界で見るとうどんはニッチで、定着には時間がかかります。トリドールが売るのは体験価値。それにふさわしい業態があれば、うどんでなくてもいいんです」
実際、トリドールは15年オランダ「Wok to Waik」を皮切りに、マレーシアや香港のヌードル系チェーンを次々に買収。さらに23年7月にはピザチェーンを展開するイギリスのフルハムショアを傘下に入れた。ピザはお客様の目の前で生地を延ばしてトッピングして、大きな窯で焼く。店頭で調理のプロセスを見せるのは、丸亀製麺と同じだ。
トリドールは海外の仲間とフィロソフィーを共有するため、年に一回、協業する各地の経営者を東京に招いて会議を行っている。会議後は、テストキッチンなどで国内外の各業態を紹介。試食して気になる業態があれば自国で展開してもらうことが狙いだ。
「各地の経営者が相互理解を深めれば、細胞が分裂していくように同時多発的な展開ができる。目指す成長のスタイルは“増殖”です」
コロナで鈍化した国内の出店ペースは100店に戻す予定だが、「海外の拡大は、それ以上。2~3年後には国内の店舗数より海外が上回っているはず」と意気込む。粟田が挑むゲームに終わりはない。
粟田貴也◎1961年、兵庫県生まれ。神戸市外国語大学を中退後、85年に焼き鳥居酒屋「トリドール三番館」を創業。その後、香川県で讃岐うどんのビジネスにヒントを得て2000年に「丸亀製麺」を立ち上げ、急成長。06年マザーズ上場(現在東証プライム)。