共同配送による効果は単に物流の効率化だけにとどまらず、CO2削減にも貢献する。LSEでは、2021年に政府から出されたCO2排出削減ガイドラインに基づいて、同社の共同配送による削減効果を検証したところ、47%のCO2削減効果があることを確認した。このことによって21年度グリーン物流パートナーシップ会議「物流構造改革表彰」を受賞した。
2023年からは顧客を巻き込んで、CO2削減量の可視化サービスを開始。これによって23年度にはガイドラインでの検証によって89%の削減効果を確認することとなり、23年度グリーン物流パートナーシップ会議「物流DX・標準化表彰」を受賞している。
筆者は興味津々でこの会社の倉庫・物流拠点を見学に行ったが、目立ったのは女性が多いこと。フォークリフトに乗って倉庫内の荷物を動かすのは大卒の女性社員だった。
「この仕事はすごく頭を使います。季節や社会情勢によって需要が増える商品が予測できます。実際の注文が来てから在庫の移動をするのでは、午後や夕方に仕事が立て込みますが、自分でたてた予測に基づいて作業をすることで午前中から~夕方まで平均して作業が可能になります。このような仕事の裁量は全て担当者自身にゆだねられています」と理路整然と語ってくれた。力しごとなのでは?男性の職場なのでは?と、こちらの予想の正反対だった。
例えば「今週末は天気が良さそうだし、運動会シーズンでもあるからあのお菓子が100個程度の注文がくるかな」と予測したら、先に90個は出しておき、実際の数量が確定したあとには、数量の微調整を行うのみ。ということだそうだ。
倉庫内のどこに何を置き、どういう順番で出すのか、20代の女性が倉庫内の棚のレイアウトをデザインしている。当日の仕事量の予測に応じて午前の休憩を長めにとっておき、お昼休みは短めにするなどと自身の働き方もデザインしている、と社員が語る姿がまた誇らしげだった。
誰かが指示したわけでなく、本人がこうした方が良いと判断し、上司はそれを許可したのみだという。自立型・自律型だ。
なぜそのようなことが可能になったのかというと、創業の頃と変わらず社員教育を大切にしているからだ。エガワアカデミーという教育制度やOJTによって三方よしの精神・理念が浸透しているし、管理職以上の朝礼にも全社員がオンラインで参加できることから経営ビジョンや経営課題の共有もなされている。このような体制のため、社員が効率化に対して自由なアイデアを出し、実行することができるという。
「理念の浸透、言うは易しだけれど、他社では苦労しているところも割と多いですよ」という筆者の問いかけに対して、江川社長は同社の研修の一例を紹介してくれた。
「新入社員は毎年農業研修をしています。田植えをして稲刈りをして精米してそれをトラックに乗せて、創業者の頃からご支援している滋賀県の障がい者支援施設までお届けしています。自分で作り、運び、届ける。1年を通してこれを経験すると荷物を雑に扱うなんてできなくなるんですよ。運ぶのは一つの箱だとしても、作り手の想い、受け取る方の笑顔、それをつなぐという我々の使命を実感することができます」
日本は課題先進国であり、今まさに大きな課題に直面する物流業界からの学びは大きい。時代を貫く不断の人材育成で経営の基礎体力を養い、次々に訪れる変化に柔軟に対応することで、自社を新しい姿にアップデートしている。課題解決の先進事例と感じた。自社に翻り、決して変えないものは何か、変えたって構わないのに固執してしまっているものはないか、この機会に見回してみたいと思う。