ビジネス

2024.01.25

DX1万人計画の目論見。育成のキモは「言語化」から

河野 一|パソナグループ 専務執行役員 CIO CCO グループDX統括本部長

Forbes JAPAN 2024年3月号(84ページ〜)では「CIO AWARD 2023-24」を特集。DXの旗のもとに変革を主導するテクノロジーリーダー5名を発表する。

本記事では受賞者5名のうち、「ITイノベーション賞」を受賞したパソナグループの河野一にスポットを当て、本誌よりの転載でお送りする。


2023年5月、パソナグループは「DX人財1万人育成」を宣言。社員のみならず、クライアント、エキスパートスタッフ(派遣スタッフ)も含め総勢1万人を2025年度までにDX人財として育成、そして、彼ら1万人をつなぐDX共創ネットワーク構築を目指すという。「1万人」という桁違いの数字に、業界内外から驚嘆の声が上がったのは言うまでもない。この壮大なDX計画を推進するのは、CIO・CCO・グループDX統括本部長・河野一だ。2007年、パソナのIT部門責任者に着任して以来、全社システムのクラウド化、社内外の人財育成など、パソナグループのDXにはこの人ありといわれる人物だ。河野が一貫して追求しているのは、人財サービスの本質的な在り方、それにはまず言語化だと話す。

「デジタル化の進展に伴い10年先の働き方や一人ひとりの役割がどのように変化していくかを、法人・個人のお客様、エキスパートスタッフの方々等、ステークホールダーに対して、明確にお伝えできるようになることが一番大事になる。それには、社員一人ひとりがきちんと自分の言葉でその変化の可能性について伝えられるように素養やスキルレベルを高めることが必要。それができれば、世の中の働き方が変わっても共に成長できる」

河野は「社会全体でデジタル化を推進する人財が少ないのであれば、私たちが社内で人財を育成することで、リーダーシップを発揮していくことが重要」と、攻めの姿勢を見せる。

河野は、何が課題かを見極める課題発見力とテクノロジーを使い解決に導く力を養うことを重視した。IT未経験者を採用する「デジタルアカデミー社員制度」にも注力。「IT人財の採用は厳しい情勢。人財不足に加え、マッチングの問題もある。それを踏まえたうえで、ポテンシャルのある人財の育成に注力し、リソース不足を解消することを目指している」。23年9月時点で、社内向けに実施したデジタル人財育成プログラムの参加者数は1014人。が、河野が描く理想の体制には、まだ手が届いていない。3倍の人数に到達するまで人財育成に注力していくと意欲を見せる。

数々の施策を成功に導いてきたCIOの資質は?と最後に問うと、河野は迷いなくこう言い切る。

「シンパシーではないか。経営陣、社員、ご協力いただくベンダーさんと全方位に対して高いレベルでシンパシーを保てるかどうか、また全社のフィロソフィーに共感できるかが、求められる資質だと考えている」

河野は10年後には、社会の問題点を解決する1人のエンジニアとして自身のキャリアを完結させたいという。


河野 一◎2007年、パソナ入社。業務基幹システム構築など主要プロジェクトの責任者、グループITシェアード会社の取締役を経て、16年より株式会社パソナグループグループIT統括部長、18年9月より現職。パソナ専務執行役員CIOを兼務。

文=中沢弘子 写真=苅部太郎

この記事は 「Forbes JAPAN 2024年3月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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