経営・戦略

2023.12.16 14:00

活発な議論、透明性、多様性ある取締役会。すべては「会社にとって最善かどうか」

Forbes JAPAN編集部

田崎ひろみ|ジェイ エイ シー リクルートメント代表取締役会長兼社長

グローバル人材やエグゼクティブ人材の採用支援に強みをもつジェイ エイ シー リクルートメント。英国で立ち上げた人材紹介会社を日本の上場企業に育て上げた経営者が語るガバナンスの要諦とは。

ガバナンスランキングで2位に選ばれたのは、人材紹介を主軸に事業を展開するジェイ エイ シー リクルートメント(以下、JAC)だ。グローバル人材やエグゼクティブ人材の採用支援に強みをもつ。1970年代に英国でゼロから人材紹介ビジネスを立ち上げ、88年に日本市場に進出した。2006年には日本法人の上場を果たすなど、JACグループの成長をけん引してきた代表取締役会長兼社長の田崎ひろみは、「取締役会も会社の経営も、かたちだけではワークしない」と話す。

──今回のランキングでは、取締役会のメンバーの多様性がJACの高評価につながった。


田崎ひろみ(以下、田崎特徴的なのは、社長の私が女性だということだろう。私自身は性別を意識したことはないが、日本の東証プライム市場上場企業で女性が社長を務める会社はほとんどない。一昔前までは企業を率いる女性オーナーが何人もいらしたが、ほとんどリタイアされている。女性が活躍すべきだといわれながらも、時代が逆行していると感じる。

──社外取締役には大手商社でトップを務めた方や日銀出身者、グローバル企業の日本支社長を務めた外国籍の方などそうそうたる顔ぶれが揃っている。

田崎:取締役会は監査等委員を含め11人で構成している。もっているスキルは全員違う。社外取締役にはリーガルや会計に強い方はもちろん、多様な業界のトップマネジメント経験のある方を選んでいる。私は自分でいろいろなことをやってきたが、大企業やグローバル企業の社長経験がある方々の知見はとても参考になる。

私は社外取締役の役割を明確に規定している。執行役は文字通り、オペレーションを通じて会社を経営する人たちだ。取締役は、執行役員に対して専門的な知見や経験をもとに的確な意見をしてくれる方でなくてはいけない。一定水準の会社の経営はできている。それ以上のレベルのアドバイスをしてもらえないようでは、社外取締役の意味がない。

社外取締役の導入は過渡期を迎えていると思う。なぜ、社外取締役が必要なのか。この「なぜ」の部分が備わっていなければワークしない。それは取締役会も、会社の運営も同じだ。

──取締役会で各メンバーに意見を言ってもらうには、対話が生まれやすい場づくりも重要だ。

田崎:当社の社外取締役は他社と兼任されている方も多いが、「JACはみんなが意見を言う。ほかの会社とは全然違う」と言われる。当社の場合、内容によっては取締役会の前に社外取締役同士で議論してもらったり、アジェンダそのものを検討してもらったりすることもある。

──透明性を大事にしている。

田崎:できるだけディスクローズし、皆と共有するのがいい。取締役会の報告事項には関連会社の人事など、本来は入れ込まなくてもいい内容も盛り込んでいる。情報が多いほうが現場に即した意見を言いやすいと思うからだ。一方で、組織内部に入り込みすぎるとガバナンスやコンプライアンスについて指摘しにくくなるため、その点は常に留意している。
 
基本的に、隠すことはほとんどないと私は思っている。それは社内においても同じだ。シークレットなことがあるから社員は要らぬうわさをしたりする。社員を信頼し、ディスクローズしたほうが無駄な憶測に時間を割くことがなくなり、やるべきことに集中できる。
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文=瀬戸久美子 写真=ヤン・ブース

この記事は 「Forbes JAPAN 2023年12月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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