コロナ禍で大活躍したレジャー・観光業の救世主は、ここにきてさらなる飛躍に突き進もうとしている。
「コロナ禍の最中に取り組んできたことが、ここにきて大きな成果に結びついています。お客様の困りごとは何なのかを突き詰め、その解決に取り組んできたことの正しさが証明された一年になりました」
レジャー施設予約サイトを運営するアソビュー代表取締役の山野智久は、アフターコロナを迎えた現在の心情をそう語った。
外出自粛に伴い観光業全体が低迷した2020年、同社はレジャー施設向けの感染拡大防止ガイドラインをゼロから作成したほか、日時指定ができるオンラインチケットシステムを提供したことで、消費者が安心して外出できる環境を整備し、業界全体を支えた。同システムは、予約管理など業務DXを推進する業界向けのSaaS「ウラカタ」に搭載されており、コスト低減や売り上げの向上といったサステナブルな施設運営の実現が評価されて、23年3月には導入社数が4000社を突破している。
「最初はチケット販売の業務効率化を軸としていましたが、データがたまると経営に生かしたいという声をいただくようになり、今は分析機能の拡充に力を入れています。観光業全体が経験や勘に頼っていた経営からデータドリブンな経営に転換する節目をけん引することができました」
レジャー・観光業が回復し、訪日外国人の増加が見込まれるなか、インバウンド対策にも注力している。22年10月、旅行・体験の予約プラットフォームを手がける香港のKlook(クルック)と戦略提携を結び、同社がネットワークをもつ海外5000社のOTA(オンライン旅行代理店)に対して、「ウラカタ」の導入企業がワンオペレーションでチケットを販売・管理できる体制を整えた。
提携の目的は、今後のインバウンド需要拡大に伴い増大する施設側の負担軽減だ。これまでOTA各社と契約を結び、別々の販売管理オペレーションを組まざるをえなかったレジャー施設にとって、一元的に販路を管理できる仕組みは悲願ともいえる。
「我々は『For you』というバリューを掲げ、顧客視点を重視しています。そこに対する貢献度を従業員の評価基準に盛り込んでいるし、採用にあたっても誰かに貢献したいという『利他』の精神をもっているかを大事にしている。お客様の困りごとを先回りして解決するカルチャーが浸透していることが強みなのです」
自治体との連携にも積極的だ。例えば、長野県とは冬の観光需要の喚起策として「ウェルカム信州アクティビティ割」を実施するなど、キャンペーンや観光コンテンツの開発を通じて地域経済の活性化に貢献。こうした取り組みも相まって、主力のレジャー施設予約サイト「アソビュー!」が取り扱う遊びは640種類に広がっており、会員数は1000万人を突破。新規会員数・リピート率ともに上昇しているという。
コロナ禍の窮地にも決して諦めることなく、顧客第一主義を貫いてV時回復を遂げ、さらなる飛躍に突き進むアソビューだが、山野は決して慢心していない。むしろ真逆だ。「会員数1000万人というのは日本の人口比で10%にも満たない数字。まだまだ改善の余地がある。まだ公にはできませんが、次の柱となる事業の計画も進んでいます。漫画の『ONE PIECE』で例えると、新たなグランドラインに入って宝を見つけに行くような感覚。ワクワクしています」。遊びの可能性を追求する山野の航海は、ここからが本番だ。
山野智久◎明治大学法学部卒。2011年アソビュー創業。 レジャー × DXをテーマに、遊びの予約サイト「アソビュー!」、 観光・レジャー・文化施設向けバーティカルSaaS「ウラカタシリーズ」を展開。観光庁アドバイザリーボード。