しかし、検索アルゴリズムは正確な情報を優先表示するようには設計されていない。むしろ、アルゴリズムを活用して検索上位に表示されるよう設計された情報を優先する。論文では、極右陰謀論「Qアノン」が「自ら調査する」ことを奨励している点に注目。「これは陰謀論志向の運動にそぐわない戦略に思われるが、今回の研究では、質の低い情報をオンラインで確認するよう人々に促す戦略が、誤情報を広める上で逆説的により大きな効果を生む可能性が示された」と指摘している。
誤った情報に常にさらされていると、判断能力が低下し、政治や科学、さらには実在の本質についてさえ誤情報に基づいた見解を持つ人々の集団が形成されることが、これまでの研究でわかっている。
では、こうした影響に対抗するにはどうすればいいのだろうか。
アスレットらの研究チームは、相互補完的な2つの戦略を提案している。人々のデジタルリテラシーを向上させるプログラムと、検索エンジンを改善して質の低い情報を優先表示しないようにすることだ。デジタルリテラシーに関する研究によると、高齢者は特にフェイクニュースの影響を受けやすいため、効果的なプログラムを提供するには特定のユーザーへの対応が求められる。ただ、こうした対応を盛り込んだプログラムの有効性は高く、最近の研究では、個々のニーズに即したプログラムを用いた介入により、高齢者がフェイクニュースと真実のニュースを判別する可能性が64%から85%に劇的に改善した。
一方、検索エンジンプロバイダーに質の高い情報源を優先するよう働きかけても、製品の改善につながるかはわからない。調査によると、グーグルなど誤情報の問題に他社より真剣に取り組んでいる企業もあるが、主要な検索エンジン間でも検索結果の質と正確さには大きなばらつきがあるようだ。検索エンジンのアルゴリズムの仕組みは依然として不透明な部分が多く、法規制を通じて透明性を向上させようとする試みは、巨大テック企業のロビー活動で強い反発に遭う恐れが高い。
常に最新情報に通じていたい人にとって当面の最良の選択肢は、米スタンフォード大学の「Civic Online Reasoning(市民オンライン論理思考)」プログラムのようなデジタルリテラシー講座を受講することかもしれない。
今回の研究論文「Online searches to evaluate misinformation can increase its perceived veracity(誤情報を検証するためのオンライン検索で、誤情報への信頼性が高まる可能性)」は、こちらのリンク先で読める。
(forbes.com 原文)