食&酒

2023.12.26

ワインの飲み頃はいつ? 「熟成させれば良くなる」は根拠薄く

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筆者はつい最近、10~20年前の赤ワインをおすすめする記事を執筆したばかりだが、その根拠は、素晴らしく熟成し、約束されていた通りの出来栄えになったワインに出会ったからだ。普通はそううまくいかない。

実際のところ、ワインは「熟成させれば良くなる」というのは根拠の薄い社会通念であり、年数がたったワインは生産者が考える飲み頃を過ぎている。確かに、グラン・クリュ(特級畑)のブルゴーニュやプルミエ・クリュ(1級畑)のボルドーなど、少なくとも19世紀から熟成されている有名なワインはたくさんある。筆者は半世紀以上前の赤ワインを飲んだことがあるが、驚くほど飲めるものだった。ただし、素晴らしい味だったわけではない。

まだまともな状態であることに驚き、ほっとしただけだ。色合いは許容できるもので、酸化もわずかだった。また、かつては素晴らしい味だったであろうものの、数十年ほど寝かせてうまく熟成しなかったワインも飲んだことがある。筆者が飲んだ仏ラフィット・ロートシルトの1929年のもののように、最初の一口はかなり良かったのに、15分したらいただけないものになってしまったものもあった。

3~5年以上熟成させた白ワインはさらに少なく、例外は一握りのブルゴーニュの白と、仏ソーテルヌやドイツのトロッケンベーレンアウスレーゼのリースリングのような熟成を意図したデザートワインだ。だが、赤ワインであれ白ワインであれ、ほとんどのワインがボトルの中でどんどん良くなっていくことを期待するのは愚かな考えだ。実際にはコルクで栓をした途端、劣化が始まる。

原因は、ボトルの中で自然に酸化が進んで風味が落ちることだけではない。コルクで栓をしたワインの5~10%にブショネ(コルク臭)が起きる可能性はあるが、コルクのせいにもできない。暑さや大きな寒暖差はワインを変質させる可能性があり、ワインを良い状態に保つには、室温が26度以上に設定されたマンションは理想的とは言い難い。だからこそ、年代物で当たり年のかなり高価なワインを購入する人は、湿度と温度が管理された保管庫に投資すべきなのだ。ボトル24本を収納できるワインクーラーは550ドル(約8万円)ほどで手に入る。それよりずっと高いものもある。
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翻訳=溝口慈子

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