気候・環境

2023.12.21 13:15

南極の氷河融解は年間1500億トン 2100年に海面上昇2メートル予測も

督 あかり

また、南極の氷の融解は、熱と栄養分を運ぶ海洋循環を崩壊させる危険性があります。

氷床が溶けると、その淡水が海水の塩分と密度を低下させてしまうのがその理由です。「海のコンベアベルト」とも呼ばれる海洋循環が弱化すると、栄養分の分布や世界の気象パターンの変化を引き起こし、食料安全保障が脅かされるおそれがあります。

ソリューション

南極氷床の融解が招く海面上昇は避けられないとしても、最悪の影響を回避することはできます。それは、温室効果ガスの排出を急速に削減すること。

国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)で採択された「シャルム・エル・シェイク実施計画」には、気候変動が氷雪圏に与える影響への取り組みも盛り込まれています。国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)では、不可逆的な西南極の氷河の崩壊を防ぐためには、世界の気温上昇を1.5度に抑えることが不可欠であることを共通認識とした上での議論が求められます。

つまり、南極を含む地球全体に壊滅的な影響を及ぼすことになる気温2度の上昇は、絶対に避けなくてはなりません。

この目標を実現するためには、ポジティブな転換で社会変革を起こす必要があります。転換とは、私たちの行動、テクノロジー、政策、市場を急速に変化させることで、これにより、排出量削減とレジリエンス(強靱性)の向上につながる大規模な変革を起こすことができるでしょう。コスト面で、新たなクリーンテクノロジーと汚染物質を使用する従来の技術が同等になる時が訪れると、力強い変化が起こります。
2030年には、再生可能エネルギーの比率が化石燃料を追い越すと予測されています。 Image: RMI

2030年には、再生可能エネルギーの比率が化石燃料を追い越すと予測されています。 Image: RMI


新たなテクノロジーの開発は、指数関数的に成長する「S字カーブ」曲線をたどります。何かを作れば作るほど、その技術は向上し、コストが下がり、新たなテクノロジーの展開が加速するという原理は、再生可能エネルギーの指数関数的成長にも当てはまります。その勢いは、2030年までに世界の電力の約3分の1以上を供給し、化石燃料を追い越す見込みです。

同様に、電気自動車(EV)は、バッテリーコストの急激な低下と充電インフラの普及に支えられ、ますます手頃で身近な存在になってきています。

通常の内燃エンジン車に比べ、メンテナンス費と燃料費の安さがEVの急速な普及を後押しし、運輸部門における排出量削減への貢献は、2030年までにEVの市場シェアは62%から86%に達すると見込まれ、それに伴い1日あたりの石油需要は500万から1000万バレル減少すると予測されています。

成長の勢いを維持するために必要なのは、その過程で生じる課題を解決するイノベーションです。「ファースト・ムーバーズ・コアリション(First Movers Coalition)」を通じた需要喚起、「ミッション・ポッシブル・パートナーシップ(Mission Possible Partnership)」による早期投資の促進、「ブレークスルー・アジェンダ(Breakthrough Agenda)」による国際強調を通じた効果的な政策設計など、変革の推進には野心的な目標と分野横断的パートナーシップが不可欠です。

COP28は、連携を強化し、すべての部門が南極を含む地球全体の未来を守るために共に前進する絶好の機会となるでしょう。

(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)

連載:世界が直面する課題の解決方法
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文=Helen Millman, WEF Hoffmann Fellow for the Poles, University of Exeter; Nigel Topping, High-Level Climate Action Champion, Climate Champions

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