今後の日本のために、KHSは理想の機会
──KHSに応募したいと思っている学生はたくさんいると思います。野心的なチャレンジに興味を持つ日本の学生に、メッセージやアドバイスがあれば教えてください。「応募しないものは手に入らない」ということです。日本には素晴らしい学生がいますが、挑戦しないことには何も始まらない。今は日本からの学生が少なくなってきていますね。今後、日本が人口動態の問題に対処していくうえで、世界から優れた人材を引き寄せていくのは不可欠です。海外で学び生活する経験は必ず役に立つはずです。
日本はとても住みやすい場所ですね。その利点をどのように生かすか、どうやって日本からアイデアを生み出していくか、スタンフォードは日本の未来について考えるには理想的な場所ではないでしょうか。
──教育への情熱はどこからやってくるのでしょうか?
私は教えることが大好きです。私は学部生のときから、教師であり、教育者であることを愛してきました。学部生の頃、プログラミング入門講座の復習セクションを教えたり、研究に携わるようになったりしたのがきっかけでした。これを一生続けたいと思うようになったんです。
若い人たちと一緒に仕事をすると、まず心が若くなります。若い人たちと一緒に仕事をするプロセスが大好きなんです。イノベーションに貢献することも大好きです。
私たちが世界で直面しているあらゆる課題に取り組むのであれば、若者と一緒に仕事をすることです。そうすれば、面白いもので、世界に対してもっと楽観的になれるはずです。
取材後記 熊平智伸
取材の最後に、ヘネシー氏から「スタンフォード、そしてKHSで得られたものは何だと思いますか? 日本に持ち帰りたいものは何でしょう?」と聞かれました。KHSでは、好奇心旺盛で頭脳明晰な若手リーダーたちが世界中から集まり、答えがない問題や不可能に思えるテーマについて、よりよい未来はどうあるべきか、自分たちに何ができるのかを、ひとつ屋根の下で議論しています。誰も答えを知らないからこそ、失敗をおそれず挑戦すればいいと一歩踏み込むのがスタンフォードの起業文化です。この文化を、日本に持ち帰りたいと思っています。
「シリコンバレーのゴッドファーザー」と呼ばれるヘネシー氏が情熱を傾け、KHSの学生に向き合っています。ヘネシー氏は毎日のようにKHS専用のスタンフォード大学キャンパス内にある「デニング・ハウス」のオフィスにいて、学生の議論にも参加してくれます。刺激を与えあう環境で、物事の考え方をアップデートしている感覚があります。
最大の魅力は「オープンな議論と対話」です。明確な答えがないことについて、互いにアドバイスしあい、点と点を結ぶ力がきわめて高い。自分の能力や発想だけで勝負するのではなく、チームとして世界で最先端の議論をしようとする姿勢は、自分のリーダーシップ像を大きく変えていると思います。
世代を超えて、世界最先端の知識とネットワークを持つコミュニティを、日本にもつなげていきたい。これは、日本の未来にとっても大切なものだと思います。