ビジネス

2023.12.16 11:30

スタンフォードオンラインプログラムLEAD修了生の目に日本はどう映ったか

日本に厳しい目を向けた石倉氏に対し、茂木氏は

茂木健一郎(脳科学者): 

「今や世界共通語となりつつある「Ikigai」から見た日本らしいイノベーションの取り組み方として、「Being in the here and now - 現状を受け入れることの大切さ」及び「The Joy of Little Things - 日々の些細な営みから手にする感謝と喜び」を挙げてみたい。「侘びさび」を大切にする日本文化は、ときを経て形を変え、完璧ではなくなるものへ慈しみとも言える「ものの憐れ」の思いが、伝統文化として知られる「金継ぎ」を生み出している。また、年月を経て蒸留されるウィスキーが十人十色の味を醸し出すことから「ダイバーシティー・インクルージョン」を土台にするサントリーが世界に冠たるウィスキービジネスを世界に向けて展開している。日本の将来に危惧を唱える見方がある一方、こうした伝統文化を大切に守る意識を下に日本独特の路線を追求していくことで、日本はこれから先も世界に誇る文化やビジネスを紹介する牽引国になるものと確信している。AIの進歩に伴い、世界では「Open AI」「Tesla」等、技術革新に於ける競争が激化し、手段が目的になってしまう事で非道徳的な方向へと発展してしまう懸念も唱えられる昨今ではあるが、だからこそ「Ikigai」の精神を糧にAIとの整合性を取り入れながら共に成長していく明るい展開をこれから先の日本に期待している」

今回のツアーでは、IBM, 森ビル、セガをはじめとするたくさんの企業の協力のもと、25を超える有意義なプログラムが提供された。その中から、スタンフォードらしいデザイン・シンキングを活用した一例を紹介する。

デザイン・シンキング・ワークショップでは、慶応義塾大学経済学部教授、中妻照雄氏をはじめ、nChain代表取締役副社長、濵平真澄氏、円ポイント株式会社CEO佐藤研一朗氏がスピーカーとして参加し、スタンフォード大学卒業生達と共に「世界に先駆けて取り組まれた日本のステーブルコインの制定」をテーマに「ステーブルコインビジネスの今後の課題」、「課題解決に向けた取り組み」、「今後のステーブルコインビジネスの可能性とビジネスの実装化」等について議論した。



ツアーに参加したスタンフォード大学エグゼクティブ・プログラムLEAD修了生からは「イノベーションに取り組む日本マーケットの現状を改めて理解することができた」「日本式イノベーションへの理解を深めることができた」「数多くのイノベーションがありながら、海外に向けた発信が劣っているような気がする」等、多岐に渡る興味深い感想が寄せられた。

最後にこのツアーを通して見えてくるのは、日々の学びの場での小さな「WHY」から生まれる忌憚のない意見交換の場の構築」「試行錯誤(trial and error)に果敢に挑戦するチャレンジ精神への支援」の更なる必要性である。大人になっても心の中にある「子供のような好奇心」が自分の中の「WHY」を刺激する所からイノベーションは生まれてくるのかもしれない。

そして今回の参加者からのコメントにもあるように、今、日本に求められているのは、日本で生まれ育まれた日本製のイノベーションを世界に向けて発信し、且つ、分かち合うネットワークの構築とその重要性の再認識。そうした努力の積み重ねが世界貢献の一環となることを、今回「2023 Stanford LEAD Tokyo Innovation Tour」を通して改めて学ぶことができたような気がする。

文=賀陽輝代

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