夫婦が語るこうしたエピソードには、肯定的な兆候と同時に、否定的な兆候も反映されることがわかったという。肯定的な兆候とは例えば、互いの感情的欲求に応じている、有意義な体験を分かち合っている、共通の価値観を持っている、未来へのビジョンが一致している、といったもの。逆に否定的な兆候とは、夫婦仲の悪さや、満足度の低下を示すものだ。研究チームは、こうしたマイナス面は、絆の強い夫婦であっても生じ得ると示唆している。
では、研究で明かされた、夫婦関係がうまくいかなる理由5つと、その克服に向けて始められることを説明していこう。
1. 一方が相手のために犠牲を払う
研究チームによると、自分の望みよりも配偶者のニーズを優先し、個人的なニーズや希望を我慢したり、無視したりする行為は、好ましくない状況を受動的に容認している状態というよりは、自分が意識的に下した決断の結果が多いという。そのような人は、相手のためならと進んで自分のことを犠牲にするものの、そこから喜びを得たり、意義を見いだしたりすることはないかもしれない。例えば、パートナーの考えを受け入れたり、相手の趣味にさも関心があるようなふりをしたりする場合、結果的には、自分自身のニーズがおろそかになり、不満を感じてしまう場合が多い。
場合によっては、相手のために犠牲を払うことが肯定的な結果につながり、2人の関係がより緊密になる可能性はあるものの、研究に協力した参加者の多くは、夫婦関係の中のネガティブな面だと指摘していた。
2022年の研究によると、そのような犠牲は大きな代償を伴う恐れがあり、夫と妻両方の夫婦関係に対する満足度を低下させる原因になる。犠牲を払う側はウェルビーイングが低下するし、犠牲を払ってもらう側は、パートナーに対して、感謝の気持ちと罪悪感が入り混じった複雑な感情を抱いてしまうのだ。
研究者たちは、自分の欲求を抑え込んで犠牲を払う前に、その必要性についてじっくり考え、個々のニーズをはっきりと伝えることを提案している。また、犠牲が払われた場合には、そのプラスの結果に焦点を当てるよう勧めている。