このような経験をする人は「フィクトファイル(fictophile)」と呼ばれ、多くはこの感情がノーマルで健全なものなのか、疑問に思っている。そして、キャラクターに対するそうした強い感情について、しばしば社会的スティグマ(偏見)や羞恥心、混乱に直面する。
この現象をより深く理解するために、フィクトファイルの人が示す3つのサインを紹介しよう。
1. 「フィクトフィリア・パラドックス」状態にある
フィンランドの研究チームは2021年の研究論文で、フィクトフィリアを「エロトマニア(Erotomania:被愛妄想)」などの精神的疾患と区別している。エロトマニアとは、実際の証拠や相互関係がないにもかかわらず、誰か(多くの場合、有名人や社会的地位の高い人物)が自分に恋をしている、と妄想的に信じることが特徴だ。一方、「フィクトフィリア・パラドックス」とは、自分が愛しているキャラクターが現実には存在しないことを強く認識しているにもかかわらず、そのキャラクターに深く憧れ続ける状態を指す。フィクションと客観的現実を区別し、自分の感情が「パラソーシャル(会ったことはない人に感じる親しみ)」なものだと認めることができる。ただし、キャラクターに対して抱く純粋な感情は、報われることがないことが明らかであるため、悲しみや不快感を生み出す場合がある。
ただしフィクトファイルは、そのキャラクターが自分の気持ちに応えてくれると空想し、そうした空想を、現実社会で生きていく上での支えの源と考える場合がある。だが研究チームによると、いずれにしろフィクトフィリア・パラドックスから感情的混乱が生じることは必然的なことだという。先行研究によれば、パラソーシャルな恋愛関係を形成する人は、そうした在り方に、現実のつながりと同様の利点があると認識していることが示されている。