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2023.12.07 14:00

G-SHOCK誕生の再現へ。自由闊達が復活の鍵

時計事業を率いる立場になっても、メンバーの自由な発想を重視した。

「G-SHOCKは業界の異端児。スケルトンや真っ白の時計がなかった時代に、常識から外れるものをたくさん出してきました。失敗したものも数多くあるし、逆に私がダメだと思ったものがヒットした例も多い。例えばある製品は『特徴がないなあ。まあやってみれば』という感じでしたが、ふたを開けたら欧州で売れた。従来のルールで考えていたら新しいものは生まれないのです」
 
ただ、待ちの姿勢が身に染みついた社員の意識改革は容易ではない。現在は部門長レベルに働きかけている段階だ。

「若い社員は新しいことをしたいんです。ただ、中間層が待ちのマインドセットになっていると、組織として動いていかない。まずは各事業で小さな成功体験をつくってもらうことから始めたいと考えています」
 
増田は社長就任後、「稟議書はムダ。ぜんぶやめちまえ」とぶち上げた。結局、ガバナンスの問題で稟議書廃止はかなわなかったが、社内には「社長が極端なことを言っているのだから自分たちも」という空気が生まれつつあるという。
 
カシオは9月、NFTを活用した、「VIRTUAL G-SHOCK」というコミュニティを開始した。増田は「私の世代が考えつくことじゃない」と苦笑いしつつも、期待を込めてこう語った。

「やっているときは先の姿がなかなか見えないもの。さまざまなトライをするなかで点と点がつながり、あとから振り返ったときにかたちができていくものだと思う。今はその点を打っていく時期です」
 
組織風土改革は道半ば。まいた種が芽吹いて太い幹になるまで、増田の挑戦は続く。


ますだ・ゆういち◎1954年、 神奈川県出身。慶應義塾大学工学部卒業後、78年カシオ計算機入社。一貫して企画畑を歩み83年登場の「G-SHOCK」誕生にも携わる。2006年執行役員、09年取締役、14年専務執行役員を経て23年6月より現職。

文= 村上 敬 写真=苅部太郎

この記事は 「Forbes JAPAN 2023年12月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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