たとえば、ポーランド国立銀行のアダム・グラピンスキ総裁は10月の記者会見で、金の保有高を増やすことで「ポーランドの信認が高まる」と述べ、引き続き金を買い入れていく意向を示した。WGCのデータによると、ポーランドの外貨準備に占める金の割合は9月時点で11.2%で、これを20%まで引き上げるのが目標だ。
日本のゴールドラッシュ
日本も見てみよう。日本は伝統的に金の大きな輸入国ではなかったが、日本の投資家や一般世帯は最近、金価格を史上最高値に近い1トロイオンス30万円まで高めている。過去30年間の平均である10万円弱と比べると3倍もの上昇だ。短中期的には、日本の「ゴールドラッシュ」は歴史的な円安が主な原因となっている。円安によってインフレが続いているため、投資家はそれに対するヘッジを求めている。
消費者物価の抑制などのために、岸田文雄首相は今月、17兆円規模の経済対策を打ち出した。所得税と住民税の一時的な減税、低所得世帯への支援、ガソリン代や電気・ガス料金への補助が柱となっている。
しかし、ご存じのとおり、現在、世界中で消費者の懐を痛めているインフレは、各国の政府がお金を刷りすぎたとくにコロナ禍中にそうした結果という面が大きい。この時期に17兆円の大判振る舞いをするのは、むしろインフレに燃料を注ぐかたちになるだろう。
日本経済新聞社とテレビ東京が最近行った世論調査によれば、岸田の支持率は33%と政権発足後の最低に落ち込んでいる。物価高対策としての所得税減税については、じつに65%の人が「適切だと思わない」と答えた。
よりよい戦略は金や金鉱株への投資だというのが筆者の考えだ。WGCも繰り返し紹介してきたとおり、金は高インフレの時期には概して優れたパフォーマンスを見せてきた。現在のようにインフレ率が3%を超える時期には、金は平均14%値上がりしている。
(forbes.com 原文)