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2023.10.04

中国で金価格が急騰 「金融の嵐」に備え

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人民元は年初来、対米ドルで6%近く下落しており、足元の上海株式相場は5月に付けた高値から8%ほど下げている。中国では不動産危機も続いていて、中国2位の不動産開発会社で世界最大の負債を抱える中国恒大集団(エバーグランデ・グループ)の株式は先週、創業者の会長が理由は不明だが警察に身柄を拘束されたと伝わったあと、取引が停止された。

こうした状況を背景に、金融市場のボラティリティー(変動の大きさ)に対するヘッジとして、金(ゴールド)が望ましい代替投資先に浮上している。

ブルームバーグ通信によると、中国では金価格が急騰しており、ニューヨークやロンドンの市場価格に対するプレミアム(上乗せ幅)は一時、1トロイオンスあたり100ドル(約1万5000円)を超え、過去最高を記録した。さらに、上海の金取引所の8月の金引き出しが前月比40%急増し、金の輸入が15%増加したというデータからは、逃避先としての金への需要が高まっているというトレンドがいっそうくっきりと浮かび上がる。

今後も人民元安や不動産市場の混迷に加え、債券の利回りも低下していくなかで、金への需要は続いていくとアナリストたちは予想している。ロイター通信によると、中国では今年上期の金インゴット(延べ棒)と金貨の販売額もそれぞれ前年同期比30%増えている。最近の「金爆買い」の動きは投資目的とみられるが、金の値上がりは消費者の間で、春節(旧正月)の繁忙期に先立って早めに宝飾品を購入しようという動きも促している。

世界の中央銀行の金保有も史上最高に

金の選好は中国の個人投資家だけの話ではない。中国の中央銀行である中国人民銀行は、引き続き金などによる外貨準備の多様化を進めている。金専門家のヤン・ニューウェンハイスは米貴金属ディーラー、ゲインズビル・コインズへの寄稿で、世界の中央銀行による金保有高は今年6月に推定3万8764トンに達し、これまで最高だった1965年の数字を400トンほど上回り、史上最高を更新したとの見方を示している。

ニューウェンハイスの推計では国際通貨基金(IMF)のまとめと異なり、報告されていない購入分も考慮されている。世界の中銀の金保有高を時系列で見ると、2008年の金融危機以降、顕著に増加していることがよくわかる。これは「米ドルのカウンターパーティーリスクがますます明白になるなか、世界中の中銀がドルからの分散を図りたがっていること」の表れだとニューウェンハイスは解説している。
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翻訳・編集=江戸伸禎

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