東アジア・太平洋地域では、組織の成功を後押しするDEI政策の価値が広く認識されています。地域の人材確保を目的としたDEIイニシアチブに強いコミットメントを持つことは、仕事の未来レポートの調査データからも明らかで、世界全体の指標が18%であるのに対し、同地域では23%となっています。
その一例として、資生堂は、女性のアップスキリングを促進し、役員レベルでのジェンダー・パリティ(ジェンダー公正)を加速させたことから、世界経済フォーラムの2023 Diversity, Equity and Inclusion Lighthouses(2023年ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン・ライトハウス)に選定されました。
同地域では、グローバル平均の67%を上回る77%の企業が、DEIプログラムを導入していることからも、ダイバーシティへの関心の高さがうかがえます。
こうしたイニシアチブには、管理職とスタッフ向けのDEI研修や、フィジカルおよびデジタルプラットフォームのアクセシビリティ向上が含まれるのが一般的です。同地域では、多様な人材の確保への関心がより高く、グローバル平均が10%であるのに対し17%となっています。
特に、インドネシアは、多様な人材の育成に最も強い関心を示し、29%の企業がこうした取り組みを支持。これに続くのは韓国で、25%の企業が同様の取り組みに力を入れています。国際労働機関は、アジア太平洋地域の労働者は、他の地域と比較してよりインクルーシブな環境で働いている傾向があるとしています。
同地域がグローバルな人材の拠点として発展しつつあることが、包摂的な環境づくりの重要性を強調しています。公共政策、特に、海外人材に関する移民法への同地域の見解は先進的です。アジア太平洋地域の雇用主の41%が、人材確保の強化に向けた移民政策の変更を支持。これは、グローバル平均の28%を上回っています。中でも、シンガポールやベトナムは、回答者の60%がこうした政策変更を支持しています。
興味深いことに、同地域では、人材戦略としてリモートワークを導入する姿勢は控えめです。国境を越えたリモートワークを業務に不可欠とする雇用主はわずか8%で、グローバルな見解と一致しています。マレーシアやインドネシアなどの特定の市場では、こうした慣行を採用する意欲は3%程度と、さらに低くなっています。
こうした状況を踏まえると、企業は、変化するスキルの優先事項に合わせて戦略を調整するべきでしょう。
雇用情勢が急速に変化する中、将来の労働力には適応性と専門性の両方を持つことが求められます。東アジア・大洋州地域は、グローバルで複雑な人材エコシスステムにおいて、人材流動性、ダイバーシティ、インクルージョンを推進し続ける必要があります。
仕事とスキルに関する今後5年間の変化については、「仕事の未来レポート2023」とそのデータエクスプローラーで、国や地域ごとデータや洞察をご覧いただけます。同レポートの調査は、オーストラリア産業グループ(Aiグループ、オーストラリア)、早稲田大学(日本)、シンガポール経済開発庁(シンガポール)、チュラロンコン大学ビジネススクール(タイ)の協力のもと実施されました。
(この記事は、世界経済フォーラムのAgendaから転載したものです)
連載:世界が直面する課題の解決方法
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