広井:どこで暮らして、仕事をして、どんな生き方が自分にとって望ましいと考えるのか。働き方、生き方、住まい方というのは、つまり幸福そのものとも言えるでしょう。働き方、生き方、住まい方の分散型というAIのシミュレーションから出てきた方向性が、これからの時代、コロナの後の幸福のあり方と重なっていると感じます。
人口増加の時代は、集団で1本の道を上る昭和的なイメージでした。経済成長という目標がはっきりしていて、画一的であることがよかった。それが、山頂まで至ると、つまりある程度成熟した社会になると、視界が360度開けてきます。
それぞれが自分の人生をデザインして、自分が望ましいと思う方向に、より自由度の高いかたちで歩んでいく。それが経済活力にとっても、サステナビリティにとっても、ウェルビーイングにとっても望ましい姿になるのではないでしょうか。分散とは多様性です。多様な土壌、環境からこそ、イノベーションも生まれてくるでしょう。
地域や農業を再興する新しい事業
日本農業大学在学中に大西千晶が設立。有機農業を営み、六次産業で「たんとスープ」を展開。持続可能な食料システムの提案や、農の関係人口増加にも取り組む。オーガニックビレッジも企画。
千葉エコ・エネルギー
千葉大学発の環境・エネルギー系ベンチャー企業で、代表取締役は馬上丈司。水田などの営農地の上で太陽光発電を行うソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)に取り組む。
ひろい・よしのり◎1986年、東京大学大学院修士課程修了。厚生省、MIT客員研究員、千葉大学法経学部教授を経て、2016年より現職。専門は公共政策と科学哲学。著書に『コミュニティを問いなおす』(ちくま新書、大佛次郎論壇賞受賞)、『日本の社会保障』(岩波新書、エコノミスト賞受賞)、『科学と資本主義の未来』(東洋経済新報社)など。