北米

2023.11.01 11:30

AI規制目指すバイデン大統領令、「移民人材の活用」にも言及

巨大テック企業を利することへの懸念

しかし、この命令がグーグルやマイクロソフトのような巨大企業の味方となることを警戒する声も挙がっている。「バイデン政権が、AIにまつわる深刻なリスクや課題への対処を優先させるために、これほど早く動いたことは非常に心強い。とはいえ、政府が既存の大手企業のポジションを固定化するような体制を構築しないよう我々は注視していく必要がある」とCohere(コヒア)の共同創業者でCEOのエイダン・ゴメスは述べた。

この大統領令は連邦政府内で幅広い権限を持ち、さまざまな機関に対して基準やガイドラインの策定を求める権限を持っている。例えば、商務省に対し、ディープフェイクなどのAIを用いた詐欺に対抗するために連邦政府機関が使用する透かしやコンテンツ認証ツールのガイドラインを策定するよう求めている。

しかし、いくつかの対策は、完全に施行される前にこれらの機関の協力を必要とする。例えば、この大統領令は、連邦取引委員会(FTC)に対し、AI企業に対する独占禁止法違反や消費者保護の取り締まりを強化するよう呼びかけているが、FTCに直接指示を与える権限は持っていない。

さらに施行に際しては、緊急時に大統領の権限で産業界を統制できる「国防生産法」に基づき、安全保障上重要なAIシステムを開発する企業に対して、テストの結果や重要な情報を政府と共有することを義務づける。

ブキャナンはまた、AIの規制において差別禁止法などの既存の法律が併用されると語った。「私たちは、さまざまな問題に対して、かなりの量の既存の法律を用いることになると考えている」と彼は述べた。

アンドリーセン・ホロウィッツは反対

AI分野のリーダーたちは、以前とは異なり、規制当局を敬遠するのではなく、積極的に政府と関わろうとしている。OpenAIのサム・アルトマンCEOは、AIの重要性を世界のリーダーらに売り込み、その規制を形成する立場に身を置こうとしている。

グーグルのグローバル担当プレジデントのケント・ウォーカーとOpenAIのスポークスマンであるエリー・ジョルジュは、各自の声明の中で、AIの可能性を高めることに注力している政府を称賛した。OpenAIとグーグルは、エヌビディアを含む他の企業とともに、自社のモデルが安全で信頼できることを保証するためにバイデン政権が今年初めに発表した一連の自主的なコミットメントに、他の十数社とともに署名している。これらの企業の多くは、すでに自社のモデルのストレステストを行うための大規模なチームを準備している。

しかし、AI規制の法制化の必要性がハイテク業界で広く認識されているにもかかわらず、爆発的な成長を抑制するような規則に公然と反対する企業もある。アンドリーセン・ホロウィッツの共同創業者のマーク・アンドリーセンは、今月発表したマニフェストで、AIのイノベーションを阻害することが「殺人」に等しいと主張し、多くの人々から嘲笑された。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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