調査対象企業のうち、急速に進化するAI技術が絡んだリスクに対処する用意があったのは、わずか9%だった。AIの危険性について把握していると回答した企業は93%に上ったが、脅威について研修を行ったり社員に説明したりしていたのは17%にとどまった。
調査は、リスク管理ソフトウエア企業のRiskonnect(リスコネクト)が今年6~7月に、世界中のリスク・コンプライアンス専門家300人を対象に行った。
米調査会社インサイダー・インテリジェンスの報告によると、文書や画像などのメディアを作成できる生成AIは、今後数年以内に7780万人のユーザーを獲得すると予想されている。これはタブレットやスマートフォンの普及率の2倍以上のペースだ。
主な懸念事項
Riskonnnectの報告書「The New Generation of Risk Report: Addressing the New Realities and Risks in 2023 and Beyond(新世代リスク報告:2023年以降の新たな現実とリスクへの対応)」の要旨によると、調査対象企業がAIに関して最も懸念していることは、データとサイバー問題(65%)、誤った情報に基づく従業員の判断(60%)、従業員による不正使用と倫理面でのリスク(55%)、著作権・知的財産権をめぐるリスク(34%)、差別リスク(17%)となっている。Riskonnnectのジム・ウェトキャンプ最高経営責任者(CEO)は「ほとんどの企業が最悪のシナリオについてシミュレーションを行っていないという事実は、その他の戦略に多額の投資をしている点を考えると驚くべきことだ」と指摘し、次のように助言した。
「今日の時点では起こりそうもないリスク事象も、明日には避けられないかもしれない。壊滅的な結果をもたらしかねない事態に対処する計画を今のうちに策定しておくことは、とりわけ組織が新たな脅威や進化する脅威を切り抜けるにあたって、効果的なレジリエンス(回復力)を構成する最も重要な要素の一つだ」
リスク
コンサルティング企業Authentic Social(オーセンティック・ソーシャル)の創業者ケイトリン・ベッグは「営業やコミュニケーションの場面では、AIに過度に依存すると、ロボットのように無感情だったり、無神経だったり、スパムめいていたり、本題から外れたりしたメッセージを送ってしまう恐れがある」と説明。「営業チームが顧客のニーズや関心を織り込んでいないメッセージを(コピー&)ペーストしてばかりいると、応答率は低下し、見込み客と顧客の満足度も低下する」と警告している。