たとえばロサンゼルスの「硬水」では、出汁が取りにくかった。でも、最近になって硬水でも出汁が取れるようになったり、カリフォルニア米が品種改良で非常においしくなったりしたために、日本食の質が格段に高くなった。
それに加えて物流体制が確立され、鮮度の高い生の水産物がロサンゼルスなど大都市でも食べられるようになって、この10年、日本食を作る人、食べる人の気分も盛り上がってきた。この流れはこの先10年も続くと思いますね。
アメリカの売上げが日本の売上げの3倍、アメリカの「胃袋人口」は10億人
山本:そんなわけで、白人たちがとにかくたくさん和食を食べるようになっていることもあって、今、弊社の海苔の売上げはアメリカが日本の3倍なんですよ。川井:日本人の食が、高齢化も手伝ってどんどん細くなっていることも一因かもしれませんね。
山本:ええ。冒頭でもお話した通り、寿司店の軒数でも、東京都よりカリフォルニア州の方が多い。日本全国の寿司店は2万5000軒、アメリカ全土では、「ネタが天ぷら」といった「なんちゃってお寿司屋」さんも含め、「酢飯」を使ってさえいれば、の軒数でいえば、もう圧倒的に日本よりも多くなっています。
それと同時に、ロサンゼルスのある寿司店さんの言葉をそのまま引用すれば、「アメリカ人の胃袋は日本人の胃袋の3倍デカい」。そうすると、日本の人口は1億人、アメリカは3億5000万人ですから、「胃袋のサイズ」の分で3倍にすると、胃袋人口換算でアメリカは10億人いるんですよ。つまり、日本の10倍のマーケットがある。
もちろんその「日本x10」のマーケットのうち、たとえばアメリカ中西部には、肉やポテトといった「アメリカ料理」を依然として主に食べるアメリカ人、寿司や和食を食べない胃袋人口が5億人ぐらいいるのでは、ということは無視できません。
ですが残りの半分、東海岸、西海岸に住む、日本食を食べる層が5億人いるとすれば、日本の5倍はいる。弊社の売上げが日本の3倍なので、6倍ぐらいまでは伸びる可能性はあると思いますね。
日本は限りなく「安いもの」に傾倒しているし、食べる量も少なくなっている。縮小傾向、ダウンサイジング傾向が否めない。加えてこの円安があります。
川井:そこをなんとかするにはどうしたらよいでしょう。
山本:やはり日本人自身が、精度の高いもの、より「いいもの」を求めていく必要があります。日本に来ないと食べられないもの、日本にしかないものをどれだけ作れるか、が重要だと思います。