安い=国際的にモノの価値が低い?
川井:僕らはまるで、昔の日本に回帰しているようです。もし本当に日本復活を考えるならば、どうしたらよいでしょうか。山本:本気で復活を目論むのであれば、まず、たとえば「お昼の単価を上げる」ことでしょう。
東京で、500円でランチが食べられることは、かなり異常なことだと思います。円安も考えると、日本のランチは、世界各国で食べるランチのたとえば4分の1の価値しかない、ということになる。せめて、一番安いランチ定食でも1000円、1500円のレベルに上げる必要があるのではないでしょうか。
たとえば川井さんの若い頃は、タイに行くとラーメンが1杯10円だったでしょう? それと同じことが今、日本で起きてるわけですよね。今ではタイの人が日本に来て、日本は安い、と言いながらランチを食べている。
川井:この状況の裏には、日本の「値上げをすることを非常に嫌気する」文化がある。ランチの値段だけ取っても、世界と日本がこれだけ乖離していると、日本だけが固有の世界観で、独自の文化を保っている感じがあります。
山本:たとえば、日本には百貨店は値上げを許容しない、という文化があります。価格も百貨店が決めます。べつに百貨店に非があるわけでなく、それが日本の習慣なのです。
そして、百貨店の慣行=日本の習慣=消費者の思い、と理解をすれば、日本の消費者にとって「価格据え置き」が重要、という文化があるのでしょうね。
>山本山当主が海苔弁食べつつ明かした「酷暑下の海苔」と小規模同族経営のリアル に続く
山本 嘉兵衛(やまもと・かへえ)◎1959年生まれ。学生時代にお茶の製造工場でアルバイトを経験し、1982年、大学卒業と同時に家業へ入る。2008年に代表取締役社長に就任。休日はゴルフやドライブ、写真撮影などをして過ごす。好きな被写体は、日本橋の桜や京都の紅葉など日本の四季。
川井潤(かわい・じゅん)◎元博報堂DYメディアパートナーズ、現在もアドバイザーを続ける。渋谷区CFO(Chief Food Officer)、食品メーカー多数、IT企業数社、その他地方行政、商工会議所等のアドバイザー。テレビ番組「料理の鉄人」企画ブレーン、雑誌「dancyu」、幻冬舎「ゲーテWeb」、産経新聞などへの執筆多数。食べログフォロワー数No.1(2023年10月15日現在60575人)。https://bunshun.jp/list/author/5fc076797765615903010000
https://toyokeizai.net/list/author/川井+潤
注:「にほんばし海苔弁当」は東京・日本橋髙島屋三井ビルディングの1階にある「山本山 ふじヱ茶房」でテイクアウトできる。1折2200円(税込)。