カルチャー

2023.11.14 13:30

現代人にルイ・ヴィトンの高級バッグが売れるのはなぜか? カルチャービジネスにおける新潮流

ベルナール・アルノー(Photo by Chesnot/Getty Images)

価格は二の次

こうした、一定額でいつでも最新のものが得られる環境下で育った現代の若者は、消費行動において「これだけ支払ったのだから、これくらいのリターンが欲しい」という費用対効果の価値観が薄まっているようだ。そんな彼らがわざわざお金を払う動機は、商品や作り手への「共感」である。損得勘定を抜きにして「好きだ」「応援したい」「ワクワクする」という感情を理由にモノを買い、サービスを利用する。数えきれないほど多くのバッグが手ごろな価格で売られているのに、驚くような値札のついたルイ・ヴィトンのバッグが飛ぶように売れるのも、まさに「便利」より「文化」を重視するトレンドの一端ではないか。
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だから、今「共感性」のビジネスで勝負するカルチャープレナーの存在に注目すべきなのだ。自身の活動において「共感性」を訴求しつつも、それをビジネスとしてもきちんと成立させているか否か。その活動にアントレプレナーとしてイノベーションの要素を携えているか否か。これらが、単なる「アーティスト」と「カルチャープレナー」を分ける定義だと考える。

グローバル市場での日本カルチャーといえば、ANYCOLORなどを筆頭に、アニメ・漫画関連の事業の存在感が強い。ただし、すでに成功を収めている例も散見されはするが、優れた文化をグローバルコンテンツとして国外へ輸出できていないことが、日本の最大の弱点だろう。同じエンタメ産業で比較しても、例えば韓国ならば、新人アイドルグループであっても、デジタルを使ってグローバルコンテンツにすることがデビュー前から当たり前となっている。

日本がもつ技術や製品一つひとつは、世界を舞台にしても類例がないほど素晴らしいのに、それをビジネスとして伸ばせる人材が少なく、ブランド化して全体を束ねるリーダーもいない。日本文化を世界に打ち出す気鋭のカルチャープレナーが、もっともっと必要だ。

いりやま・あきえ
◎慶應義塾大学卒、同大学院経済学研究科修士課程修了。三菱総合研究所でコンサルティング業務に従事後、2008年米ピッツバーグ大学経営大学院にてPh.D.を取得。同年より米ニューヨーク州立大学バッファロー校ビジネススクール助教授。2013年より早稲田大学大学院早稲田大学ビジネススクール准教授。19年より現職。

構成=眞板響子

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